産官学連携活動報告 マイクロツーリズムガイドブック『謎解き稲城の歩き方』発行

観光文化学類の鮫島卓ゼミは、稲城市および稲城市観光協会との「稲城市観光まちづくり産官学連携協定」の取り組みとして、稲城市の歴史と文化を学ぶガイドブック『謎解き稲城の歩き方』を5月26日に発行しました。同日に稲城市の高橋市長を表敬訪問し、完成した冊子を稲城市および稲城市観光協会に寄贈しました。

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この取り組みについて、鮫島卓先生と担当した学生に話を伺ってみました。

  • 稲城市長へ寄贈(左から山中さん、鮫島先生、高橋市長、福田さん、鈴木さん)
    稲城市長へ寄贈
    (左から山中さん、鮫島先生、高橋市長、福田さん、鈴木さん)
  • ガイドブック『謎解き稲城の歩き方』
    ガイドブック『謎解き稲城の歩き方』

観光文化学類 鮫島卓(さめしま たく)先生
観光文化学類4年生 鈴木葵(すずき あおい)さん (神奈川県立大和西高等学校出身)
観光文化学類4年生 福田朱里(ふくだ あかり)さん (埼玉県私立大妻嵐山高等学校出身)
観光文化学類4年生 山中妃夏(やまなか ひな)さん (神奈川県川崎市立川崎高等学校出身)

Qまずガイドブック制作の目的や狙いを教えてください。

鮫島先生:稲城はベッドタウンで観光地のイメージは薄いかもしれませんが、実際には長い歴史と深い文化があります。実は駒沢女子大学の敷地は縄文時代の遺構や遺物が発見された場所です。現在はその痕跡を目にすることはできませんが、他にも市内各地の調査をすると、多くの歴史や文化の痕跡があることがわかりました。例えば、大学から歩いて5分ほどの高勝寺には東京都最大のカヤの大木がありますが、京王線敷設の際に切り倒されそうになったところを当時の住職が懇願して守ったのだそうです。そうした逸話を文献調査やフィールドワークをしながら丹念に拾い上げて、一年かけて執筆編集したものです。
ですから、単なるおすすめスポットの紹介ではなく、地域の歴史と文化を再発見する「観光学的ガイドブック」です。神社仏閣、公園、棚田など何気ない日常の風景も、成り立ちや背景を知るととても愛おしく思えるものです。幸い、コロナで遠くに行く旅行ではなく、マイクロツーリズムと言われるように地元回帰が起こっていますので、そうしたニーズにも応える内容になっています。本学の図書館はもちろん、稲城市内の図書館にも寄贈しましたので、ぜひ読んで実際に謎解きをしながら街を歩いてほしいと思います。

Qガイドブックづくりはどのようにして進めたのでしょうか。

鮫島先生:このガイドブックは、鮫島ゼミの学生18名が市内の人文資源を抽出し、1人1スポットを選定、合計18か所を取り上げました。取材に関しては、稲城市観光課や生涯学習課および稲城市観光協会にも情報提供の協力をいただくなど産官学連携で取り組みました。また、市民の方々に快く取材に応じていただいたり、出版社の方に執筆指導を受けたり、多くの方々の協力なしには実現できませんでした。本当に感謝しています。また、稲城市の文化や歴史に詳しい駒沢女子大学人間文化学類日本文化専攻の先生方にも監修を行なっていただくなど、学類を超えた取り組みになったことも大きな特長です。

Qガイドブックの特長を教えてください。

福田さん:この本は、スポット毎になぞかけを用意し、謎解きをしながら楽しく歴史や文化を学べるよう工夫しています。また難解な文化財に関する専門用語をできるだけ平易な文章にし、写真も多用して一般の読者でも親しめるようにしています。さらに、スポット毎に飲食店や土産店を掲載して、旅を充実させるコツなども紹介しています。
大学での地域研究や観光学や知識を最大限に生かし、観光を学ぶ者の視点から稲城市の魅力を伝えられた一冊となっているので、たくさんの人にぜひご一読いただけるとうれしいです。

Qこの活動を通して良かったこと、苦労したことは何ですか。

鈴木さん:良かった点は地域の魅力を知ることの価値を、身を持って学んだことです。今回のガイドブック制作を行わなければ、稲城には何があるのか、地域の方はどのような人たちなのかを知ることなく、大学生活を終えていたと思います。今では稲城が特別な存在となっています。地域の魅力を知ることは、地域の価値を守ることにつながります。今後も地域の魅力を知り、地域への誇りをもって日常を楽しみたいと思います。
苦労した点は取材のアポイントメントを取ることです。アポイントメントを取ることが初めてだったため、とても緊張しました。相手に失礼のないよう学生同士で練習を行い、ドキドキしながら電話をかけた思い出があります。断られてしまったこともありましたが、根気強く電話をかけた結果、取材を承諾してくださったこともありました。苦労もありましたが身になる経験ばかりで、大きな達成感を感じています。

Qガイドブックが完成し、表敬訪問をふりかえってどう思いますか。

山中さん:ガイドブックが無事に完成し出版できたことをとてもうれしく感じています。自分たちで足を運び取材し、文章を考えたものを実際にガイドブックとして手にした時にはうれしく、達成感を感じました。
市長表敬訪問はとても緊張しましたが、貴重な経験でした。ガイドブック作成にあたり稲城市役所をはじめ、稲城市観光協会の方々には多くの協力をしていただきました。完成したガイドブックを直接お渡しできたことで少しでも恩返しや稲城市に還元できていればうれしいです。また、稲城市長からガイドブックの感想を聞くことができ、お褒めのお言葉をいただけてとてもうれしかったです。このガイドブックをきっかけに稲城の魅力を知る人が増え、さらなる地域活性化につながればうれしいです。

Qなぜガイドブックの収益を寄付するのでしょうか。

鮫島先生:市販化によって得られた収益は、すべて文化財保全のための活動資金として稲城市に寄付することにしています。その理由は、稲城の地域固有の文化が失われつつあることが取材を通じて明らかになったからです。例えば、江戸時代から現存する古民家は経年劣化が著しいですし、稲城を象徴する谷戸の棚田も開発の波に呑まれて消滅の危機に瀕してしています。こうした現状を読者にも知ってもらうと同時に、購入していただくことで文化財保全に貢献できる仕組みをつくり、持続可能な観光を実践したいと考えています。

  • メディア取材対応の様子
    メディア取材対応の様子
  • 稲城市長表敬訪問の様子
    稲城市長表敬訪問の様子

なお、稲城市長表敬訪問の様子は、多摩テレビ『TTV-NOW』や、読売新聞など各メディアで取り上げられました。

読売新聞の記事はこちら

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