授業紹介ゼイヤー ウィン
質問1:先生の自己紹介をお願いします。
ミャンマーのヤンゴン出身になります。学部時代に東南アジア史を専攻していたことがきっかけで、歴史遺産や文化財の活用面から観光産業に興味を持ち、ミャンマーの国家資格である観光ガイド免許を取得後に日系のランドオペレーター(旅行会社)で5年間ほど働いた経験があります。そして、日本留学後は大学院で観光産業と地域社会の関係性に関する研究テーマ(特に、少数民族居住地域の観光地化を中心に)で調査をしてきました。
そうした研究背景もあり、大学院終了後は国際協力・開発援助の分野で開発コンサルタントとして、観光開発を含む地域開発や都市開発の開発プロジェクトでの計画づくりや社会調査等の業務を中心に担当してきました。特に、自分の専門である観光学は理論研究による「学術知」と、現場経験に基づいて培われる「実践知」の両方で構築されるべき学際的な分野であると考えており、教育活動においてもその両側面の活用を重視していきたいと思っております。
ミャンマー、エーヤーワディー・デルタの技術協力プロジェクト
研究対象地インレー湖の水上祭祀
質問2:紹介する科目の目的と特長を教えてください。
今年度の担当授業としては①海外観光資源研究E(東南アジア)、または②観光人類学があります。
- ① 海外観光資源研究Eでは、東南アジア各国の歴史・文化的背景に対する学習を通して、観光資源および観光地を取り巻く社会環境の動向を理解するとともに、観光産業が抱える多様な課題やその対策を学ぶことを目的としています。
- ② 観光人類学では、地域社会の観光地化による社会・文化変容・環境問題などを文化人類学的な視点から学習することで、観光開発の持続性に対する問題意識を高めます。そして観光地とその地元社会における多様で重層的な関係者の間における対立や葛藤、またその克服といった実践事例を学ぶことで、「社会現象としての観光」に対する「教養力」の向上を目指しています。
質問3:授業ではどんな工夫をしていますか。
授業内容においては、私の実務経験や調査経験を活用し、学生が学問としての観光を学ぶ上で「観光」・「文化」・「国際協力」・「行政」・「産業」等の多様な視点から考察・理解できるように指導しています。学術的理論だけではなく、企業や開発の現場で自分が体験して知識や具体的な事例を提示することで、学生の学習意欲向上を促し、説得力のある指導を行うことができると考えています。
現在担当している授業は講義形式が中心ではありますが、講義テーマに関連する動画や現地博物館のVR展示等といったICT技術を活用して、学生が海外事例を学ぶ上で身近に感じられるような内容構成の工夫を行っています。また、各講義に後半にディスカッションタイムを設けることにより、学生の興味・関心または疑問・質問に対応することで、講義内容に対する理解力の深化を目指しています。
質問4:履修した学生の声を教えてください。
- 私は社会学を履修しているのですが、少し似ている部分があって面白かったです。民族というのは、同じ文化を共有している集団なので、どうしても外から来た人を疎外してしまうことが多いと思いますが、一緒に生活をして調査することで、現地の人々の本当の気持ちを理解することができるので、フィールドワークはいい調査方法だと思いました。
- フィールドワークというものを私は一週間程度で済むような研究なのだと思っていました。しかし今回授業を受け、こんなにも長い月を経てでもほんのひと握りの情報しか得ることができない、という過酷な研究方法なのだと知りました。なにごとにもラポール(信頼関係)形成は人間である以上は必要不可欠なものなのだと思いました。
- 私たちは観光地にワクワクや楽しい気持ちで訪れているけど、観光地の現地の人からすると自分たちの生活空間に侵入され、嫌な気持ちになることもあると、改めて気づくことができました。私たち観光客は現地の人のことを思いやって行動しないといけないと思いました。