キウイフルーツ果実に含まれるたんぱく質分解酵素「アクチニジン」は、果実のどこに多いのか?

キウイフルーツ果実には、アクチニジンというたんぱく質分解酵素が含まれています。

このアクチニジンは、食肉や牛乳などに含まれる食品たんぱく質をよく分解しますので、キウイフルーツには消化を促進する効果があることが報告されています。

また、調理する前の肉をキウイフルーツの果汁やすりおろした果肉に漬けておくと肉が軟らかくなる、いわゆる食肉軟化作用も有しています(右図)。

また、調理する前の肉をキウイフルーツの果汁やすりおろした果肉に漬けておくと肉が軟らかくなる、いわゆる食肉軟化作用も有しています(下図)。

さてこのアクチニジンについて、最近ネット上で気になる記事を見かけました。「アクチニジンはキウイフルーツの皮のすぐ下に豊富なため、皮を厚くむくとアクチニジンのほとんどが失われる」というものです。

以前から一部のネット記事や料理本などで散見されるこの情報ですが、これは本当でしょうか?

これを確かめるために、精製アクチニジンを標準物質として、定量的なSDS-PAGE法で実際に測定を行ってみました。その結果が右図です。

これを確かめるために、精製アクチニジンを標準物質として、定量的なSDS-PAGE法で実際に測定を行ってみました。その結果が下図です。

実測の結果、アクチニジンが皮のすぐ下に特に多いということはありませんでした。むしろその下の部分(430mg/100g)の方が、皮のすぐ下の部分(370mg/100g)よりもやや豊富であるという結果が得られました。

さらに種の周囲の果肉(347mg/100g)にも豊富に含まれており、皮を厚めにむいたぐらいで「アクチニジンがほとんど失われる」ということは起こりえないことが実証されました。

  • グリーンキウイ(ヘイワード種)果実におけるアクチニジンの水平分布(単位はmg/100g湿重量)[食科工誌49(6), 401-408記載の方法で測定]
    グリーンキウイ(ヘイワード種)果実に
    おけるアクチニジンの水平分布
    (単位はmg/100g湿重量)
    [食科工誌49(6), 401-408記載の
    方法で測定]

果実の個体差や測定誤差なども考慮すれば、「アクチニジンは緑色の果肉内にほぼ均等に存在している。白い果心部分にも存在しているが、その量は少ない」と考えるのが安全だと思われます。

このように、ネット記事や時として立派な刊行物でさえも、出所の不明な怪しい情報が含まれている場合があります。

今回の例でも不確かな情報を真に受けて、消化促進のために好きでもない皮を無理に食べたり、皮を厚くむけばゼラチンゼリーが作れるなどと考えたりされないように、ぜひご注意ください。

悪気なく書かれた記事や著作物中の誤情報がテレビ番組などで紹介され、各種のネットニュースサイトで拡散し、さらにSNSで二次拡散を続けて、収拾がつかない事態に発展することもしばしば起こる時代です。

記事のライターの皆さま、出版物の著者・監修者や出版社の皆さまには、図らずもデマの発信源になるなどという汚点を残されませんよう、くれぐれも慎重なご対応をお願い申し上げます。


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