健康栄養学科教授の佐藤勝重先生に、ご自身の研究のご紹介をお願いしました。

中枢神経の機能を光で捉える
膜電位イメージングによる中枢神経の機能構築過程の追跡

私の研究テーマは、膜電位イメージング法を用いた、中枢神経系の機能発生・構築過程の解明です。中枢神経系は生命活動を統合的にコントロールしていますが、その主な構成要素は、神経細胞とそれをサポートするグリア細胞です。これらの個々の細胞の性質については、分子生物学的方法の進歩によって遺伝子レベルまでかなり詳細に分かってきました。一方で、中枢神経系はとてつもない数の神経細胞やグリアで成り立っています。これらの細胞がアンサンブルとして働くことによって、様々な神経機能が発現してきます。神経細胞の機能は電気的活動によって営まれていますが、その活動を解析する方法としては、非常に細いガラス電極を用いた電気生理学的測定法が古くから使われています。この方法では、細胞の電気的活動をいわば「点」として捉えることはできますが、アンサンブルとして働く中枢神経系の活動を「面」として捉えることはできません。そうした「面」としての神経系の活動を捉える方法のひとつが、私が用いている膜電位イメージング法です。

この方法は、細胞の電気的活動を「光」のシグナルとして捉える方法で、米国Yale大学のL. B. Cohen博士の研究グループを中心に開発されました。日本では、Cohen博士の下で一緒に開発を進めた、私の恩師である神野耕太郎博士(現東京医科歯科大学名誉教授)が早くから独自に光学計測システムを作成し、心臓の機能発生・構築などで数多くの研究業績を残されました。その研究がいま駒沢女子大学に受け継がれ、神経系の機能発生・構築へと展開し、世界に向けてデータを発信し続けています。

  • 独自に組み立てた光学イメージングシステム
    独自に組み立てた光学イメージングシステム

神経系の機能発生・構築過程は今なお不明な点が多く、脳がいつどのようにして機能し始めるのか、脳機能形成を統御する内部因子・外部因子にはどのようなものがあるのかなどについては、まだまだ多くの謎が残されています。私たちの研究グループは、関東学院大学栄養学部、東京医科歯科大学脳神経外科学講座、東京工業大学情報理工学研究科の先生方と共同研究体制を組み、現在この謎の解明に挑んでおります。(研究に興味を持たれた方は、http://square.umin.ac.jp/optical/をご参照ください)

(駒沢学園通信第20号より転載)

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