キウイフルーツの追熟
2023/01/16
キウイフルーツは、食べごろの見極めが難しいフルーツだとよくいわれます。確かに買ってきた果実を食べてみると、少し硬くて酸っぱいことも少なくありません。これには、追熟という現象が深く関わっています。
キウイフルーツは、バナナ、洋ナシ、アボカドなどと同様、果実が未熟なうちに収穫し、その後に熟させてから食用に供します。このように、収穫後に熟させる過程を追熟といいます。収穫直後のキウイフルーツ果実は、ジャガイモやニンジンのように硬く、クエン酸やキナ酸などの有機酸の含量も多く、非常に酸っぱくて食用に適しません。またデンプンも豊富で、下図・左のように果肉の断面が白っぽく、とても美味しそうには見えません。
この未熟果の追熟に大きな役割を果たすのが、植物ホルモンのエチレンです。エチレンはC2H4という単純な物質ですが、未熟果に劇的な変化を引き起こします。デンプン粒は分解され、スクロース、グルコース、フルクトースなどの糖が増えるため、糖度が増します。逆に有機酸は減少し、糖と酸のバランスに優れた食べごろの果実となります。デンプンの分解にともない、果肉もみずみずしく鮮やかな色調に変わります(上図・右)。
一般にはあまり知られていませんが、追熟して食べごろになったキウイフルーツ果実では、未熟果と比較してビタミンC含量が少し増え、また消化促進効果が期待できる機能性成分であるアクチニジン含量も1.5~2倍に増えます。美味しくなって、しかも栄養・機能性成分も増えるとなれば、ぜひ食べごろの果実を食べたいですね。
キウイフルーツの多くの品種では、エチレン処理をしない限り自然には熟しません。そのため、市販のキウイフルーツ果実のほとんどは、あらかじめエチレンで処理した後に出荷されています。エチレン処理は1回で十分ですので、買ってきたキウイフルーツがまだ硬くて未熟な場合でも、室温においておくだけで追熟が進み、数日で食べごろになるはずです。
ただし、自宅で栽培したキウイフルーツ果実や、観光農園のキウイ狩りで収穫してきた果実などは、自分でエチレン処理をする必要があります。その時、もっとも一般的な方法は、キウイフルーツ未熟果とリンゴをビニール袋に入れて、密封して室温に置いておく方法です。リンゴはエチレンを発生するので、そのエチレンでキウイフルーツの追熟が進むという仕組みです。しかし、この方法はしばしば失敗します。それはリンゴの品種や個体によってエチレン放出量に差があり、時として追熟を引き起こすための必要なエチレン濃度に達しないためです。
収穫後の未熟果を確実に追熟させるためには、リンゴよりも市販の追熟剤の使用をお勧めします。日本園芸農業協同組合連合会の「熟れごろ」は簡単に使えて、確実性の高いエチレン発生剤です。
キウイフルーツ果実の特性をよく理解して、ぜひ食べごろの果実を美味しく食べてください。
エチレン発生剤「熟れごろ」の使用法は動画でご確認ください。