住空間デザイン学類 橘田スタジオ見学会レポート 旭化成建材(株)ネオマワールドに行ってきました!
2023/09/06
橘田スタジオでは、卒業制作や就活に役立つように、さまざまな専門分野の学外での体験学習活動を行っています。
この春、橘田が長年関わらせていただいている茨城県境町にある「旭化成建材(株)ネオマワールド」に、4年生スタジオメンバーと見学に行ってきました。
橘田スタジオ4年生の佐藤仁美さんの見学レポートをご紹介いたします。
見学に際し、旭化成建材(株)快適空間研究所 大塚弘樹様、濱田香織様には、大変貴重なお話とアテンドをしていただきまして、誠にありがとうございました。
住空間デザイン学類 橘田 洋子
今回の大きなテーマは、「寒い家を社会問題として捉える」ということであったと考えている。今回、旭化成建材(株)の大塚さんと濱田さんに案内をしていただき、茨城県境町にある「ネオマワールド」で断熱事業についてじっくりと理解を深めた。
ネオマワールドには、展示棟と体験棟の二つの建物がある。
展示棟では、まず温熱環境の状況について説明していただいた。日本は「冬はシアトル、夏はマニラ」という過酷な環境を持っている。しかしながら、温熱環境については後回しにされていることが多く、冬場は健康に影響が出ると言われる室温16℃を下回る家はなんと60%を超えているという状況を知った。交通事故での死者数が4611人に対して、ヒートショックでは17000人。温熱環境は目には見えない。しかし見えないからこそ、さらに明確に社会問題として捉えるべきだと強く感じた。
温熱環境の問題や断熱材について理解が深まったところで体験棟「ネオマの家」へ移動し、「ネオマフォーム」を用いたあたたかい暮らしについて体験した。ここで最も印象に残ったことはやはり快適性である。冬は室内でも激しい温度差があり、体調も崩しやすい。しかし、この体験棟は床下のエアコン一台だけで家全体の気温を一定に保っている。そのため床暖房がなくても一切冷たさを感じることはなく、エアコンの直接的な風が当たることもない。床下エアコン用のガラリがあらゆる箇所に設置されており、サッシなど十分な断熱性能が機能している中でも、住宅内の空気が循環している印象を受けた。
温熱環境は見えない部分であるため、意識をしないと気が付きにくいことである。しかしながらネオマの家を体験して、いかに気温が人へのストレスになっているかを実感することができた。冬でも裸足で温もりを感じられる家は、人々のこころまでをあたたかくする住まいとして、非常に生活を豊かにできるものであると感じた。
また、全体のデザインとしても非常に勉強になる機会であったと感じている。赤と白で統一されたパネル展示やパンフレット類は、普段生活の中で見えない部分である断熱材を「断熱材ネオマフォーム」としてブランド的に認識できるようになっていた。体験しながら順に理解を深めていける展示の動線計画や季節によって内容を変更できる展示の方法は、住宅のみならず、商業空間づくりの工夫も知ることができた。
この展示棟で断熱材とその他の素材の熱の伝わり方を触って比較したり、熱交換器をサーモグラフィで確認したりと、実際に見て触れて体感することで、データを並べるよりも関心を持って、温熱環境を社会問題として捉えることができたのではないか。
長く過ごす住宅で健康に過ごせることは、暮らしの中で最も大切なことであると今回の体験を通して改めて感じた。断熱という要素が人々の健康に大きく影響することを共通の認識として広めていくべきだと強く思う。
住空間デザイン学類4年 佐藤 仁美