住空間デザイン学類 橘田スタジオ4年生 高松・直島デザインツアーを開催!<後編>

昨年9月に開催した空間デザインの見学・体験を目的とした高松・直島のデザインツアー。前編に引き続き、後編をご紹介します。

住空間デザイン学類 橘田 洋子

住空間デザイン学類 橘田スタジオ4年生 高松・直島デザインツアーを開催!<前編>はこちら

9/7(木)2日目 直島

海の駅「なおしま」

大屋根で囲われた直島の玄関口

2006年に完成したフェリーターミナル駅。設計者は、妹島和代氏と西沢立衛氏による国内外で活躍する建築家ユニット「SANNA」。フェリーや車、利用客などが建物とより一体的で密接な関係になるように、敷地のほとんどを大きく軽やかな大屋根で覆っている。

屋根の下には、観光案内所、カフェ、乗船券売り場、特産品販売店、バスターミナルが設置されている。フェリーやバスを待つ人、カフェでくつろぐ人、車でフェリーに乗る人、これから島の観光に向かう人などさまざまな人たちであふれる、いわば島のエントランスホールのような場所だ。また周辺の街並みを見渡せて溶け込めるような開放的な空間になっていると感じた。周辺には草間彌生氏の作品「赤いかぼちゃ」などさまざまな作品があるため、デザインを時間いっぱい楽しめる関係性も素晴らしかった。

  • 海の駅「なおしま」全景
    海の駅「なおしま」全景
  • 島に来る人々を出迎える赤いかぼちゃ
    島に来る人々を出迎える赤いかぼちゃ

美術館「杉本博司ギャラリー 時の回廊」

鑑賞・体感のできるギャラリー

杉本博司氏の多様な作品群を継続的かつ本格的に鑑賞・体感できる世界唯一のギャラリーとして2022年に開館。

「時の回廊」とは、建築空間や自然空間を回遊し体感することを促す安藤建築の特徴や、杉本博司氏が追求し続ける時間に対する問い、そして彼らの長年にわたる直島との関係性などを反映し、鑑賞者に自然の変化や壮大な時間の流れを体感、歴史や生きることについて思索をめぐらせてもらうことを意図するものである(公式サイトhttps://benesse-artsite.jp/art/sugimoto-gallery.htmlより引用)。

作品を見て、休憩がてらカフェラウンジでお茶をした。

カフェラウンジには、杉本博司氏によって「三種の神樹」と名付けられた、神代杉、尾久杉、栃の木を材に用いた、彫刻作品のようなテーブルが置かれている。木や杉の年月が感じられ、時の流れの変化を体感することができた。ラウンジからは「聞鳥庵(もんどりあん)」と名付けられた茶室が見える。ガラス越しに瀬戸内の海も一緒に眺めることができ、屋外からはコンクリートや自然と組み合わさった姿と二度作品を味わうことができた。

  • 「時の回廊」改修されたラウンジで記念写真
    「時の回廊」改修されたラウンジで記念写真
  • 屋外から見た茶室「聞鳥庵」
    屋外から見た茶室「聞鳥庵」

地中美術館

光の大切さを学んだ美術館

「自然と人間を考える場所」として、2004年に設立。瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設され、館内には、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が安藤忠雄氏設計の建築に恒久設置されている。地下でありながら自然光が降り注ぎ、一日を通して、また四季を通して作品や空間の表情が刻々と変わる。コンクリート、鉄、ガラス、木の4つの素材を使用し、極限まで切り詰めて設計されている。地中にあることでしか実現しない空間が広がっていた。

  • 「地中美術館」のコンクリート打ち放しの建物の間から記念撮影
    「地中美術館」のコンクリート打ち放しの建物の間から記念撮影

館内は撮影禁止だったため、自然と作品にのめり込んだ。特に私はクロード・モネの作品には圧倒された。照明の光で作品を表現するのではなく、自然の光により作品の良さを引き出しているという表現の仕方を学ぶことができ、ここでしか感じられない体験をすることができた。

李禹煥美術館

ふと原点に戻る美術館

2010年に開館したアーティスト・李禹煥氏の70年代から現在に到るまでの絵画・彫刻が展示された、安藤忠雄氏設計による美術館。美術館へ入るまでにもいくつかの屋外作品があった。「無限門」は、門をくぐると異世界へ向かう門であると感じさせる作品。タイトルのように門の間から見える海はずっと道が続いてる感じがした。

海と山に囲まれたなだらかな谷あいに立つ自然の地形を生かした建物は、館内へ向かう通路も異世界を感じられるような空間になっていた。建築と絵彫刻が重なり合ったこの美術館は、シンプルだからこそ原点に戻って考えさせられる空間になっていると感じた。

  • 「無限門」の下で記念撮影
    「無限門」の下で記念撮影
  • 「李禹煥美術館」館内へのアプローチ
    「李禹煥美術館」館内へのアプローチ

9/8(金)3日目 直島

家プロジェクト

島内に点在するアート

旅行最終日、私たちは家プロジェクトを鑑賞した。
家プロジェクトとは島内の本村地区に点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものをアーティストが作品化しているアートプロジェクトである。

点在する作品たちは歩いてまわることができるため、島内の雰囲気を味わいつつ楽しむことができる。私たちはかつて農協のスーパーマーケットとして使用されていた「本村ラウンジ&アーカイブ」で鑑賞チケットを購入し、「角屋」「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」の公開される7軒のうち6軒を鑑賞した。

  • 家プロジェクト「角屋」アート空間に酔いしれて
    家プロジェクト「角屋」アート空間に酔いしれて
試される観察眼

中でも特に印象に残ったのは「碁会所」だ。昔、囲碁を打つ場所として島民が集まっていたことに由来して名付けられた。
アーティスト須田悦弘氏が手がけたこの作品は2つの和室で構成された建物と庭の敷地全体を作品空間として捉える。個々をよく観察し、空間全体を見比べることで新たな発見が得られる作品だった。さまざまな角度から時間をかけて観察することの重要性をこの体験を通して感じられた。

  • 家プロジェクト「碁会所」庭の椿越しの建物
    家プロジェクト「碁会所」庭の椿越しの建物

「家プロジェクト」ではそれぞれの歴史、文化、記憶を捉え直し、未来へ受け継ぐ手法としてアートによって生まれ変わった空間の在り方も学ぶことができ、大いに刺激のある鑑賞体験となった。

住空間デザイン学類4年 松津 見穂
住空間デザイン学類4年 三上 麻衣

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