住空間デザイン学科4年 橘田スタジオ 国分寺「沖本家住宅」見学会を開催!

橘田スタジオでは、6月22日水曜日、卒業研究に向けての調査・情報収集・デザインの勉強などを兼ねて、国登録有形文化財「沖本家住宅」の見学会を開催しました。

  • 集合写真
    集合写真

「沖本家住宅」は、数年前より国分寺市の依頼を受け、保存・修復・活用のサポートをしています。またスタジオ歴代の学生たちと、実測調査やカフェの実証実験、イベントのボランティア協力なども行っており、毎年見学会も恒例開催しています。

今回の見学会でも、オーナーの久保様には大変お世話になり、貴重なお話も頂戴しました。
誠にありがとうございました。
以下、スタジオ学生からの見学レポートを紹介します。

住空間デザイン学類 橘田洋子

国登録有形文化財「沖本家住宅」とは

国分寺市内藤に所在しており、大正期より国分寺外線沿いに建築された富裕層の別荘の一つ。沖本家住宅の洋館は、昭和8年に川崎忍設計により、広島県出身の貿易商の土井内蔵の別荘として建てられた。その後昭和12年に同郷である沖本至に譲渡され、住居として使用された。昭和15年には、和館が建設され、主に客間として利用された。現在は洋館の一部が改装され住居兼カフェとして使用されている。

  • 全景(左:洋館、右:和館)
    全景(左:洋館、右:和館)
  • 洋館・和館平面図
    洋館・和館平面図
  • 建物概要
    建物概要
  • 洋館・和館平面図
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  • 建物概要
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見学レポート

住空間デザイン学類 4年 暮林真衣

洋館は、窓は洋風な見た目だが、開き方は日本的な引き違い戸で、1階には、室内側に防犯を合わせ持ったと推測される木枠がある。また2階には2つの寝室と屋根裏収納があるが、北側寝室の壁と天井はほかの部屋と同様の洋風意匠だが、畳が敷かれるなど、設計者がアメリカの建築を学んで、海外風な設計の中、日本の伝統的な設計を取り入れていることが興味深い。内装は、当時アメリカで流行っていたプラスティックペイントの一種であるクラフテッキスに似せて日本の左官職人が仕上げていたり、梁や柱、玄関扉などは、共通した幾何学の掘り装飾文様が施されているのも印象的であった。

和館は、木造平屋建ての近代和風建築。洋館の食堂の南側の引き戸を介して渡り廊下でつながり、独立した玄関を持たない。北西側に4畳半の和室、奥に手洗いと便所を設け、南側には客室的な要素の強い6畳の次の間と10畳の奥座敷が続きで並ぶ。広縁からサンルームまで全て1枚の大きなガラス戸が贅沢に使われていて、1枚も割れることなく現在に至っているのに驚いた。内装は、床の間の重ね継ぎの落とし掛けや、天井の竿縁や回り縁にこぶしの皮付き丸太を施すなどの随所に工夫を凝らした意匠が印象に残った。

庭も見ごたえがある。現オーナーのガーデニングが見事だ。洋館の近く、和館の近くで全く違うお花がきれいに管理されており、洋館の玄関までのアプローチも楽しめた。
カフェのメニューも多くあり、お皿やコップなどもきれいで、昔から使っているテーブルや椅子でカフェを楽しむことができた。

住空間デザイン学類 4年 細谷佳世

洋館が建てられた昭和8年はまだエアコン設備が日本に普及する以前に建てられた建物でその後建てられた和館も同様。夏場どのように涼んでいたかを重点にして建物の考察をしていきたい。

和館と洋館どちらにも共通している点だがどの部屋も必ず窓があり、小さくとも600mm幅の引き違い型の窓が配置されている。また、見学会の際に居間で休憩をしていた時に、一時的に玄関ドアが開いた状態になっていたのだが、その時に室内に風が吹き抜けたことで非常に涼しく感じた。この経験から私は当時の人びとは風通しを良くすることで室内でも夏の暑さをしのげるよう工夫していたのではないかと考えた。

平面図をよく見ると廊下の突き当たりにある食堂には奥に大きな窓があり、初期に洋館のみ建っていたことを考えると玄関ドアあるいは居間の窓と室内ドアを開けておくことで風通しをよくし、涼んでいたのではないかと考えられる。同じように2階廊下にも外からの空気を取り入れる通気口のようなのがあり、2階の窓とドアを開けておくだけでも風通しが良いように設計されていると考えられる。また、建てられた当時周辺は田畑が多く建物が少なかった状況を考えると敷地内に植えられている背の高い木々や竹林は当時、夏の日差しを遮り、より夏の暑さをしのぐ役割を担っていた可能性がある。

和館は主にお客様をもてなす建物になっている。造りは木造建築で平屋建てになっており、北西側にお手洗いと炉がある和室、南側には広縁に沿って六畳と十畳の和室、そしてフローリングのサンルームがある。広縁は全面ガラスの引き戸になっている。サンルーム側の全面ガラスの引き戸と合わせて開けておくと風通しの良い空間になる造りになっている。また、六畳と十畳の和室の間の欄間はすのこのようなデザインになっており、襖を閉めた状態でも風が通り抜けて涼しくなるよう工夫されている。

エアコン機能がない時代、自宅でどう快適に過ごていたのか疑問に思い今回、室内での涼み方をテーマに沖本家住宅の考察をした。その結果、窓やドアを開けることで室内の風通しが良くなり、蒸し暑い日本の気候でも涼しく過ごすことができるということがわかった。実際に沖本家住宅を見学して風通しを良くすることで涼しくなることを体感し、当時の人びとがエアコンを利用しなくも快適に過ごせていたのだと感じた。今の一般住宅でも、設計の工夫で、少しでも風通しを良くすることで少しでも電力消費量削減に貢献できるのではないかと感じた。

  • 洋館 凝った意匠の玄関から見学へ
    洋館 凝った意匠の玄関から見学へ
  • 洋館1F 居間の意匠を詳細調査中
    洋館1F 居間の意匠を詳細調査中
  • 洋館1F 防犯木枠付き引き違い窓
    洋館1F 防犯木枠付き引き違い窓
  • 和館 座敷から右手広縁、奥のサンルームを望む
    和館 座敷から右手広縁、奥のサンルームを望む
  • 庭のガーデニングも見ごたえがある
    庭のガーデニングも見ごたえがある
  • 昔からの空間や家具に包まれたカフェは魅力的
    昔からの空間や家具に包まれたカフェは魅力的

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