スタジオ見学会で東京水辺空間へ
2022/06/09
新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置の解除を受け、三戸スタジオでは新4年の所属学生とともにスタジオ見学会に出かけてきました。感染に配慮しつつ皆が明るい気持ちになれそうと選んだ見学先は「春の東京水辺空間と日本橋エリア」。日本橋発着の神田川・隅田川クルーズに乗船した後、大規模開発が進行中の日本橋エリアを歩き回ろうというものです。
季節はまさに桜満開の中、普段はなかなか見ることができない水辺からの都市空間や、歴史的な日本橋の建築にも触れてきました。以下、参加した学生が着目したポイントとともにご紹介します。
テーマ1_水辺からみた東京の都市空間
- 高速道路の下や橋の下、普段歩いている所より低い位置から街並みを見て、大きな吹き抜け空間(ド―ムのような)から見ているようで面白かった。
また、江戸城の外堀だった石垣が現代まで残っているものが見られるのは興味深かった。
クルーズに乗った日は桜が見ごろだったため、川沿いの土手(芝生)でお花見をしている人たちが大勢いて、都市の中での生活でも自然を感じることができて、良いなと思った。(C.T) - 日本橋川には数多くの橋が架けられており、どれもが歴史の面影を残している。
船に乗り川を辿ることで、水路が張り巡らされ水の都とされていた江戸を直接見ているような気持ちになった。また、沿岸の石垣に残された戦災・震災の跡から時代の流れを支え続けた橋の力強さを感じた。
トラックなどが無かった時代に船で荷物を運ぶことが1番効率的であったことから、水路と共に発展したまちが今もなお日本の商業の発展の地として在り続ける様子を水辺から感じた。(A.O) - 船で東京の川を見たことでたくさんの橋を知ることができました。
日本橋は戦争の際についた焦げ跡が今も残っており橋の下まで焦げるほどの悲惨な状況だったことが伺えました。(A.U)
テーマ2_歴史と文化を継承する再開発
- 日本橋エリアは2040年の首都高地下化事業と共に再開発が行われることになっている。川周辺でのオフィスビルや複合施設の建設は、「日本橋川沿いエリアまちづくりビジョン2017」に基づき歴史と文化に合わせ最先端都市機能が共存する魅力的なものになるとされている。
江戸時代、水上交通や町人の発展により賑わいを見せていた日本橋は人とまちの回遊性が高かったことがわかる。これから行われる再開発でも、当時の日本橋のイメージを継承し、水の潤いと賑わいが溢れるまちづくりがなされ、まち全体が盛り上がることに期待したい。(A.O)
テーマ3_丁寧に歴史を残しつつ生まれ変わる建物
- 歴史的な建築として日本橋三越本店があるが、本館の1階は新しい空間となっている。建築家の隈研吾氏が「白く輝く森」へとリニューアルさせたものとなっており、外観からは想像のできない空間が広がっていた。
また、散策中に日本橋兜町にある『K5』という複合施設を見つけた。この建物は、大正12年に日本初の銀行として建てられた歴史的建造物をリノベーションしたもので、建築と空間デザインは、スウェーデンの建築家デザインユニットCLAESSON KOIVISTO RUNEが担当している。「静と動」のコントラストを意識し、地下1階と1階を賑わいのある「動」のスペースとし、ホテルは外界の喧騒から隔絶した「静」の場所とした。耐震構造を加えた上で、元の建物の躯体(くたい)や、荘厳な仕様を可能な限り生かしている。歴史的建造物の外観を残しつつも、内部を新しくし、歴史と現代の融合が感じられた。
さらに『teal』と『ease』というスイーツショップを見つけた。『ease』の姉妹店となる『teal』は、元『パスカル・ル・ガック』の眞砂翔平さんと『ease』の大山恵介さんがタッグを組み、個性をコラボレーションさせたチョコレート&アイスクリームショップだ。店名の由来は、水運が盛んで水の都だった日本橋兜町にちなみ、鴨および鴨の羽の色・青緑色を連想している。このお店がある場所は日本橋兜町最北部にある日証館で、渋沢栄一の旧邸宅跡地に建設された歴史的建造物だ。重厚感のある外観の建物は変わらず、内部をお洒落なカフェにしていた。
日本橋は古い歴史のある建物ばかりだという固定概念があったが、丁寧に歴史を残しつつも新しく生まれ変わってきているということを建物や空間を通じて強く感じた。(K.O)
テーマ4_低層階に昭和の姿を残すビル
- 日本橋ダイヤビルディングは昭和5年に建てられ、80年以上前の都市景観を継承しつつ2014年に高層棟を増築した。1階のエントランスはギャラリーとして公開されており、内部の構造の太い柱や窓枠に使用されている金具などは建設当時の姿をそのままに感じることができる。低層階の中でも外部のみ当初の建築を残し、低層階の内部と高層階は新しいビルとして使用されており、外観は低層階と高層階がはっきりとわかりやすく分かれているのが特徴的だった。
日本橋には実際に関東大震災の際の燃えたあとが残っていたり、日本橋ダイヤビルディングでは当時の建物が使用されていたり、自分が思っているより昔の建築などはまだ残っていることに驚いた。災害の多い日本でも丈夫な建築は完全に残らなくても、再利用されたりしていて昔の人の建築の技術に圧倒された。(Y.I)