外国人の観点から日本文化を考える

外国人の観点から日本文化を考える ―「日本の文化と歴史」授業探訪―

奈良の東大寺や京都の金閣寺などの寺院、日光東照宮、厳島神社などの神社、姫路城などの城郭、そして白川郷の合掌造りなどのさまざまな建造物が、世界文化遺産として登録されています。これらの建造物は、世界的にも高い評価を得ているといえます。

世界文化遺産の白川郷の合掌造りは、ドイツ人の建築家のブルーノ・タウト(1880~1938)が、「合掌造り家屋は、建築学上合理的であり、かつ論理的である」と絶賛しています。この評価が、白川郷の合掌造りが世界文化遺産に登録される重要な根拠となりました。
このように、日本の文化財が世界遺産に登録されるためには、その根拠として外国人による評価が鍵となる場合もあるのです。

今から100年前の明治初年の日本では、政府が主導する文明開化の動きなどにより、日本の伝統文化や美術工芸品に対して価値を見出さなくなっていました。残念ながら、破壊されたり、海外へ流出してしまった美術・工芸品もありました。
こうした中、日本の文化財の危機的な状況を憂い、その価値を見出し、世界へ発信した外国人がいました。その中の一人が、アメリカ人のアーネスト・フランシスコ・フェノロサ(1853~1908)でした。フェノロサは東京大学で哲学・政治学を教えるため来日しましたが、狩野派などの日本画の魅力にみせられ、狩野派の師範の資格を取得し、狩野派の鑑定師として一目置かれる存在となった人物です。

フェノロサは、日本画以外の美術工芸品にも造詣が深く、明治政府から各地の寺院の仏像等の調査を依頼されるほどでした。奈良県の唐招提寺の仏像調査において、頭の部分がない仏像を見て、ギリシャ彫刻に匹敵するほど価値の高い美術品であると指摘しました。日本人ならば、信仰の対象として、完全な姿の仏像を求めるでしょう。

フェノロサの仏像に対する見方は、日本人と外国人では違うことをよく示しています。逆にいえば、日本人の私たちには気づかない、日本の文化や文化財に対する新たな見方を教えてくれる存在ではないでしょうか。

日本文化専攻3年生の必修科目「日本の文化と歴史Ⅲ・Ⅳ」では、外国人の書いた日本や日本の文化に関する本を読み、そこから外国人の日本文化に対する観点を調査し、そこから見えてくる日本の文化の特徴について探っています。現在、一人ひとりの興味や関心に基づき、論文をまとめ、1冊の論文集を作成しています。今からどのような論文集ができるか、楽しみです。

(皆川義孝)

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