教員エッセー:「バズる」「ググる」から日本の文化を考える

SNS等のWeb上で大いに話題になることを意味する「バズる」ということばがあります。これは、英語buzzをもとにした外来語「バズ」に「る」を付け、動詞化したことばです。外来語を動詞化した流行語には、近年でもタピオカを飲むことを意味する「タピる」、Googleで検索することを意味する「ググる」などがあります。

この外来語と「る」を合わせたことばは、いつごろから見られるのでしょうか。
明治期には「ラブ(love)」に「る」をつけた「ラブる」という語が見られますし、今でも使われる「サボる」は、実は大正期から流行し、昭和初期の小林多喜二『蟹工船』(1929年)にも「俺ア仕事サボるんだ。」などと出てくることばなのです。「サボる」は、フランス語のサボタージュということばの「サボ」に「る」を付けたものです。二つ分の音の長さのことを、専門的には「2拍」と数えます。「バズる、タピる、ググる、ラブる、サボる」は、いずれも「2拍+る」というかたちです。

「2拍+る」は、外来語に限らず、もともと日本語の動詞によく見られるかたちの一つでした。2拍の名詞に「る」をつけたものとして、平安時代には雲が立ち込める様子を表す「くもる」、室町時代には曲がりくねった様子を表す「うねる」という用例がみられます。さらに江戸時代には「料理」を動詞にした「りょうる」のようなことばも登場しました。近年では、告白するという意味の「こくる」、挙動不審を意味する「きょどる」など、2拍の略語に「る」をつけた若者言葉が多く生まれています。

このように、私たちが何気なく使っている「ググる」、「バズる」、「タピる」、「こくる」などは、その構造をみると、1000年以上前の古人(いにしえびと)から私たちに受け継がれてきた、日本の文化に基づく言葉ともいえるでしょう。

日本語の構造からも、日本に息づいている文化の流れについて知ることができるのではないでしょうか。

(石川 創)

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