七福神に見る日本の宗教文化

今年も新しい年が始まりました。日本人は新年を迎えると、その年の幸福等をお願いするために、いくつかの寺院や神社を巡る七福神巡りに出かける光景を目にします。
七福神は、宝船に7つの神々を乗せた縁起物としても親しまれています。七福神巡りの歴史は、江戸時代以降に庶民の信仰として流行し、現在のような七福神巡りができたとされています。
その御利益も、家内円満、健康長寿といった個人的な願い事から、商売繁盛など、家の生業に関する願い事まで、さまざまです。このように、七福神はさまざまな願い事を叶えてくれる神として、広く受け入れられていったといえます。

  • 1998年に発足した小田原七福神会の七福神巡りパンフレット
    1998年に発足した小田原七福神会の七福神巡りパンフレット

七福神を構成する神々の出身を見ると、日本文化の特徴が見えてきます。
日本由来の神は鯛を抱える恵比寿だけです。恵比寿は、生業を守り、福をもたらす神として信じられてきました。恵比寿以外の神々は、すべて海外出身です。
まず、古代インドの由来の神を紹介しましょう。武将姿の毘沙門天、琵琶を奏でる弁財天、打ち出の小槌を持つ大黒天は、古代インドの神々です。毘沙門天は福徳をもたらす神、弁財天は福徳や財宝を授ける女神、大黒天は商売繁盛と農家においては豊作を叶えてくれる田の神として信仰されました。
つぎに、中国由来の神と僧です。手に桃を持つ寿老人、経典を結んだ杖を持つ福禄寿は古代中国の神々です。また、大きな袋を持ち、大きなお腹の布袋は、古代中国で弥勒の化身として信じられた実在した中国の禅僧です。その体形から福徳円満の象徴として信仰されました。
このように、七福神の神々は出身地も違い、かつ叶えてくれる願い事も違う神々を一艘の宝船に乗せて形づくられた日本独自の信仰といえます。さまざまな願い事を叶えてくれる神々を共存させることにより、多くの願い事を叶えてくれる御利益のある神々として、江戸時代以降に庶民に受け入れられていったといえます。

日本文化は、よく日本古来の文化と海外から伝来した文化を融合させることが特徴といわれます。その代表的なものが、インドの仏が日本の神に姿を変えて現れたとされる神仏習合でしょう。
しかし、七福神は外国から伝わった神々をそのまま日本古来の神々とともに共存させているという点で、神仏習合とは違った日本独自の宗教文化といえるのではないでしょうか。

山本 元隆

日本文化エッセー :新着投稿