看護と保育の協働に向けて
2025/03/13
みなさんは、医療的ケア児をご存知ですか? 医療的ケア児は、日常生活や社会生活を送るために、人工呼吸器や痰の吸引、栄養剤の注入などの医療的ケアが必要な子どものことです。医療の進歩に伴い、自宅や地域で生活する医療的ケア児が近年増えています。
2021年に、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(通称:医療的ケア児支援法)」が制定・施行されました。この法律の施行により、幼稚園や保育所、認定こども園などで医療的ケア児の受け入れが進んでいくことが期待されます。
看護学部では、駒沢女子短期大学保育科の教員と連携しながら、将来看護職や保育士を目指す学生への講義・演習を行っています。今回は、その講義や演習の一部をご紹介します。
看護学生は、3年次前期に開講している小児看護学方法論において、駒沢女子短期大学保育科の教員による「小児医療における保育・遊び」をテーマの講義を受けました。小児病棟での保育の実際や子どもへの遊びを学びました。さらに、実際にマジックカード※を学生が作成し、子どもと同じような気持ちになってカードの仕組みを考えている様子がありました。
- ※ マジックカード:画用紙と紙テープを使って作成した仕掛けカードのことです。
マジックカードの作成方法の説明
紙テープがクロスした部分に、緑色の紙をはさみます。
一度画用紙を閉じます。
画用紙を開くと……緑色の紙が移動しました!
一方、保育科の学生は、小児看護学方法論のうち、地域で生活している医療的ケアが必要なお子さんとご家族の特別講義を聴講しました。講義後に記入された感想の一部を紹介します。
- 特別な支援を要する子どもを通常保育でも預かることが進められたり、法律ができてきている今、保育者になるものとして知識をつけ、どんな子どもでも安心して預けられるような保育者になりたいと思いました。
- これから医療的ケアが必要な子どもなどと関わることがあるかと思います。そんなときは今回の講話を思い出し、どんなに小さなことでも、その子にとって命に関わることにつながってくると思うので普段と違った様子があったり気になったら、連携をとっている医師、看護師などと必ず情報共有を行いたいなと思いました。
そして、特別講義の翌週には、看護学部実習館の実習室で、実際に医療機関で使用されている物品やモデル人形などを使用して演習を行いました。演習内容は、小児用のベッドやストレッチャーの操作、点滴中の子ども(モデル人形)のだっこ体験、子ども(モデル人形)の心拍数測定、医療的ケアに用いる気管カニューレなどの説明です。
小児用ストレッチャーの操作
点滴中の子どものだっこ体験
モデル人形の心拍数測定
医療的ケアに用いる物品の説明
保育科の学生にとっては、普段見たり触れたりする機会がない物品ばかりだったようで、新鮮な表情で演習を行っている様子が印象的でした。演習後に記入された感想の一部を紹介します。
- 今回の講義を通して今まで別だと思っていた医療と保育のつながりを感じました。
- この体験を通して、保育の現場で医療的ケア児に出会った際に「知らない」がほんの少しなくなることをうれしく思います。子どもの最善を求めて保育をしていきたいです。
今後、幼稚園や保育所、認定こども園だけではなく、医療機関でも看護と保育が協働する機会が増えることが考えられます。学園内でも、教員がお互いの専門性を発揮しながら、看護学科と保育科の学生が相互に学び合える環境をサポートしていきたいと考えています。
文責:橋浦 里実