難病患者の家族の思い
2022/06/16
3年生の「人間関係論」の授業にゲストスピーカーとして難病患者の家族である塩沢淳子氏を招き、「患者になること、患者の家族になること」をテーマに講義をしていただきました。
塩沢氏の夫と娘(紅梨さん)は脊髄小脳変性症のDRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)という神経難病です。
紅梨さんは8歳で発症し現在は27歳、夫も同時期に発症し、お二人の介護を続けてこられました。DRPLAは小脳変性症の中でも最も重度の病態で、運動障害、認知障害、不随運動、てんかん発作などにより、できていたことができなくなり寝たきりとなるといった経過を辿ります。ご主人さまは4年前に他界され、現在は27歳になられた紅梨さんの介護をされています。
塩沢氏一家は紅梨さんと夫の発病前からハワイに移住し、現在もハワイで生活されています。日本との環境の違いもあり、大変なことがある一方でハワイの人たちのOHANA(家族)の精神に助けられていることもたくさんあるとのことです。紅梨さんと夫が発病し、難病で治療法はなく、悪くなる一方だと告げられた時の衝撃と落胆し途方に暮れた日々のこと、日に日に転びやすくなる、歩けなくなっていく、できていたことができなくなっていくことを自覚する紅梨さんの姿に言いようのない辛い気持ちであったことをお話してくださいました。
一方、本来は優しい家族愛に満ちている夫が病気の進行により感情のコントロールができなくなり、夫の暴言を病気からくるものだからと受け止め、夫を支え続けた日々の思い、その中でひと時も休むことができない二人への介護の様子は、聞いているだけでも過酷なものでした。周囲からは一人で二人の介護は無理だと善意の助言もあったが、家族が離れ離れになることは望まないこと、治療法が見つかることを諦めずにできる限りのことをしたいとの思いを聞かせていただきました。また、ある看護師からの言葉に気持ちが救われたこと、その言葉で今も頑張れていると話され、これから看護師になる学生に対して、医療は進歩しているので学び続けてほしいとの言葉をいただきました。今はまだ出来ないこと(治療法)も10年後には出来る様になることを塩沢氏自身信じている、そのために頑張っていると話されました。学生たちは、塩沢氏の一言一言を重く受け止め、患者、家族の思いを直接聞く事ができたことで看護師としての役割を改めて気づくことができたとの感想と感謝の気持ちを塩沢氏に伝えました。
今回、塩沢氏は日本神経学会への参加、厚労省でのDRPLAの患者登録の呼び掛けのための記者会見のために来日され、そのスケジュールの隙間で本授業での講義をしていただくことができました。塩沢氏はCURE DRPLAという国際的な団体に所属し治療法開発の推進のための活動を行なっています。治療法の開発には一人でも多くの患者さんのデータが必要です。DRPLAの患者は日本人に多いということで日本人の患者さんの登録を呼びかけています。私たちにできることは、DRPLAについて多くの人に知ってもらうことで治療法開発の後押しをすることだと思います。塩沢氏はCure Disease Kuri Channel を開設しています。以下からアクセスしてご覧いただき、一人でも多くの方に関心を持っていただけることを願っています。
文責:奥井良子