日本看護科学学会学術論文奨励賞受賞報告

「小児がんにより長期入院している学童・思春期の子どもの気持ちに対する看護師の理解と関わり」という論文で、日本看護科学学会学術論文奨励賞をいただきました。身に余る賞をいただき、今後も頑張っていかなければと身の引き締まる思いです。

この研究の出発点は、私が小児専門病院の小児がんの子どもたちが多く入院する病棟で働いていた時の経験です。学童期や思春期のお子さんがどのような想いで入院しているのか捉えにくいと感じたこと、中でも余命が限られてきた時に、お子さんの気持ちを知りたいと思っても難しく、亡くなった後に後悔したこともありました。

そのため、この研究では、長期入院している小児がんの子どもの気持ちを看護師がどのように理解し、関わっているのか、その実践を記述することを目的としました。具体的には、がんの子どもが多く入院する小児病棟で、看護師とお子さんの様子を観察したり、その病棟で働く経験豊富な看護師にインタビューをしたりしました。その結果、小児病棟の看護師は、子どもの「キャラクター」や好みなどを捉え、それとともに、子どもが気持ちを話しやすい関係作りや、子どもの表現力を育てる関わりをしていました。そして、「子どもの気持ちを知りたい」と思った時には、子どもにはあえて質問せずに「待つ」という関わりをしていました。それは、大人が改まって聴こうとすると、子どもの本音を聴けなくなってしまうと考えていたからでした。看護師は子どもが話しやすい環境を作りながら、子どもが話したいタイミングを待っていました。そして、子どもが「ポロッと」出した気持ちを絶対に取り逃がさず、次のケアにつなげていました。

この研究は言語化しにくいケアを記述したものです。経験豊富な看護師の優れた関わりを記述できれば、学生や大学を卒業したばかりの看護師でも参考にできるのではないかと思っています。今回、このような賞をいただいて、こういった研究の意義を再確認できたのはとてもうれしく思います。

この研究ができたのは、たくさんの方々のご協力をいただけたからです。この場を借りて、ご協力いただいた病棟の看護師、スタッフの皆様、入院していた子どもたち、保護者の皆様に御礼を申し上げます。また、この論文は私の博士論文の一部です。ご指導いただいた諸先生方およびご助言いただいた諸先輩方に感謝いたします。

看護学科:秋田由美

看護学科ニュース :新着投稿