【地元発見プロジェクト】「大学付近の谷戸田を歩く」を実施しました。

駒沢女子大学が所在する稲城市の南側は、多摩丘陵と呼ばれるなだらかな山間部で、本学は愛宕山(あたごやま)と名付けられた丘陵上に位置しています。稲城市内の多摩丘陵には、中央を南西から北東方向へ流れる三沢川に向かって、谷戸(やと)と呼ばれる細長い谷間の地形がたくさん存在します。

稲作に適した土地が少なかった関東地方では、弥生時代以来数少ない水田耕作地として、水に恵まれた谷戸には古くから谷戸田(やとだ)と呼ばれる水田が営まれました。考古学の発掘成果や中世以前の創建とされる寺社や城跡の分布から、稲城市内の谷戸田は、少なくとも室町時代、場所によっては奈良・平安時代にはすでに存在していたと考えられます。

駒沢女子大学は、薄葉谷戸(うすばやと)と清水谷戸(しみずやと)と呼ばれる2つの谷戸に挟まれた丘陵上に建っています。南側の清水谷戸は残念ながら古い景観を失ってしまいましたが、北側の薄葉谷戸は中世以来の風景をわずかに伝えており、谷戸田もいくつか存在します。稲城市内にかつては多数残されていた谷戸田ですが、機械化が困難で生産効率も悪く、高齢化による耕作放棄などが進み、現在では薄葉谷戸をはじめとする極めて限られた場所でしか見られなくなってしまいました。そうした意味で、薄葉谷戸は都心でも貴重な文化的景観の一つと言えるでしょう。

  • 大学北側に残る薄葉谷戸の近景
    大学北側に残る薄葉谷戸の近景

そこで、「日本文化入門Ⅰ」という1年生前期の授業では、【地元発見プロジェクト】「大学付近の谷戸田を歩く」と題して、受講生全員で薄葉谷戸を訪れました。受講生からは、「大学の近くにこれほど美しい景観が残っていることに驚きました。できればこの風景がずっと残ってほしいと思いましたが、道が悪く行き帰りだけでも大変なので、土地を所有している方にとって、こうした田畑を続けていくことは、とても苦労が多いのかなと考えさせられました」といった感想が寄せられました。

こうした声を受けて、その後の授業内では、薄葉谷戸のような希少な文化的景観を未来に伝える必要性やその方法について、全員で意見を出し合いました。以下は寄せられた意見のごく一部です。

すでに失われてしまった風景を取り戻すことはできませんが、現代まで残されてきた薄葉谷戸のような景観を、今後も大切に保全していくことは必要なことだと思います。ただ、谷戸の田畑を耕作する人手が足りていないことが、一番の問題だと感じました。これを解決するためには、まず薄葉谷戸を少しでも多くの人たちに知ってもらう必要があります。田植えや収穫体験のような谷戸田と触れ合うイベントを企画し、その様子を若い世代がSNSで発信し谷戸の存在を広く伝えることで、少しでも関心を集められれば、ボランティアなどで谷戸田の維持に協力する人も増えるのではないかと考えました。

谷戸田に限らず、そこで暮らす方々の生活を伴う文化的景観を未来に伝えるためには、その文化的価値への正しい理解はもちろん、さらなる広範な人々による並々ならぬ意欲・工夫や行動力が必要です。「日本文化入門Ⅰ」の授業では、「未来に伝えたい日本の文化とは!」という問いをきっかけに、「伝えるべき日本の文化とは何か?」「そもそも日本の文化の特徴とは何か?」「どうすれば日本の文化を未来に、そして世界に伝えていけるのか?」といった課題について、受講生一人ひとりが正しい根拠に基づき主体的に考えられる力の育成を目指し、授業を展開しています。

下川 雅弘

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