第8回オープンキャンパス 8月20日(土) 体験授業(田中)
2016/09/01
いま話題の疾病における栄養管理とチーム医療での管理栄養士の役割
栄養状態はさまざまな病気と密接に関わり合って、時にはその病気の主要な原因になっていることもあります。今回の体験授業は、いま話題の疾病である「がん疾患」を取り上げながら、栄養状態の判定・評価、栄養診断、栄養ケアプランの進め方、チーム医療での管理栄養士の役割の一部をお話させていただきました。
近年の日本人死亡原因疾患順位では、一位に悪性新生物(がん)、二位心疾患、三位肺炎の順位になっています。どの疾患においても生活習慣との関連性は高くみられ、特に消化器がんなどに罹患した患者様がたんぱく質・エネルギー栄養障害(PEM)となり、最終的には衰弱死で亡くなるケースが後を絶ちません。前回のオープンキャンパスの体験授業でも、低栄養状態を防ぐための基本的な栄養管理の内容をご紹介いたしました。PEMはエネルギーとたんぱく質が欠乏した状態で、健康な体を維持し活動するのに必要な栄養素が足りなくなる状態をいいます。特にがん患者様では慢性的に飢餓状態となり、病気がエネルギーを必要とする侵襲度が高く、脂肪の減少よりも筋肉の減弱が多く見られます。そのことにより栄養不良状態の悪化、体力及び免疫能の低下が進行します。
これらの原因としては、栄養素摂取量の減少、消化管通過障害(消化器がん)、食欲不振及び化学療法などの治療や検査による食事の制限などが挙げられます。先行研究によると、大腸癌で亡くなられる方の場合、6か月間の体重減少率5~10%の人が14% 、10%以上の人が14%、胃癌の場合には、5~10%減少する人が30% 、10%以上減少する人が14%であり、がん患者さんの実に86%もの方が体重減少による低栄養状態が原因で亡くなると発表されています。その様にならない為にも、管理栄養士は食べられない原因を突き止めます。特に化学療法などによる栄養障害の改善、痛み、熱などによる食欲不振の改善、口腔内の変化、痛みなどの摂食障害の改善、消化管通過障害、機能障害などの改善、及び病気の不安やうつなどによる食欲不振の改善については、患者様の状態や希望などを取り入れて栄養評価し、栄養・食事の介入をします。
この栄養・食事の介入は医師、看護師、薬剤師、理学療法士などとのチームにより患者様の栄養状態を安定させる方法を見つけ維持・改善させていきます。また、がん患者様は「死」という恐怖が目の前に迫っていることも多く、臨床心理士などと共に心理状態を加味しながら栄養状態を維持させることも重要です。
今回の臨床栄養学の体験授業から、管理栄養士はこのようにあらゆる面から患者様に対応していく必要があることを理解していただけましたら幸いです。このように「栄養と食」を通じて人のために尽くす「管理栄養士」という素敵な仕事を、ぜひ選んでみませんか?