日本とパレスチナを結ぶ―パレスチナ刺繡帯プロジェクトによる特別授業
2023/10/19
観光文化学類 杉野 知恵
最近のニュースでは、ガザ、イスラエル、空爆、地上侵攻といった言葉が毎日飛び交っています。ハマスが数千発のロケット弾をガザ地区からイスラエルに向けて発射したという第一報を私が聞いたのは、10月7日の学園祭(りんどう祭)の最中で、パレスチナの文化を紹介するため、パレスチナ刺繍帯プロジェクト代表の山本真希さんのご協力を得て、伝統的な刺繍をあしらった帯の展示を行っていたときでした。今回が多摩地区初の展示で、多くのお客様に立ち寄っていただきました。
翌週の13日には、観光文化入門Ⅱの授業に山本さんをお招きして特別授業を行いました。もともとは、刺繍をきっかけにパレスチナや中東問題への関心をもってもらうおうと企画していたものですが、緊迫する現地情勢についての連日の報道を踏まえ、紛争・戦争ではなく、文化を切り口に平和とパレスチナの今を考える授業になりました。
授業では、山本さんが会社員をやめてパレスチナ刺繍帯プロジェクトを立ち上げたきっかけや、2021年にUNESCOの無形文化遺産に認定されたパレスチナ刺繍が施された美しい民族衣装の紹介のほか、刺繍帯が出来上がるまでの過程と日本とパレスチナの2つの文化の間でものづくりをする際に心がけていることなどを伺いました。
私からは、パレスチナ問題はハマスの攻撃という最近の出来事だけを取り上げて判断できるようなものではなく、現状に至るまでの歴史的な経緯やこれまでの国際社会の対応などを含めて考えていく必要があると伝えました。紛争が激化している今だからこそ、学生には文化のもつ力や可能性にも目を向けてもらいたいと思っています。
最後に学生の声をご紹介します。
- パレスチナはただ紛争ばかりをしている国ではないという言葉にはっとしました。イスラエルやパレスチナと聞くと紛争地域ということが1番に頭に浮かぶけれど、豊かな食と文化や、世界遺産などもある地域なのだと知ることができました。また山本さんのアプローチの仕方、人はネガティブなことよりもポジティブなことの方が継続的に関心が向くというのもなるほどなと思ったし、実際自分は興味関心を持つことができました。今後も刺繍を通して日本の人たちに多くを広めてほしいと感じました。パレスチナ問題やニュースで取り上げられているものは一部分を切り取ったものであったり、片方からの見方であることがあるので、過去のことやまた違った視点からの情報が大切であると知りました。
- 小学生の頃刺繍に没頭していた時期があり、その時にクロスステッチに挑戦していたことと、最近のパレスチナとイスラエルの問題によってパレスチナのことは知っていたので、授業はとても分かりやすく、興味深かったです。また、パレスチナとイスラエルどちらにも友人がいらっしゃる山本さんにとって、今の国際情勢はとても辛いものではないかと感じました。メディアなどにたくさん取り上げられている山本さんの貴重なお話を聞くことができ、とてもうれしく、さらにパレスチナ刺繍などに興味を持ちました。
- パレスチナと聞くとニュースで取り上げられていたりする、紛争やイスラエルとの戦いなどがイメージにありましたが、今回の授業を聞いて、パレスチナ=豊かな文化がたくさんあるということに気づきました。パレスチナ刺繍も初めて知り、実際に見てみると日本ではないようなデザインになっておりとてもすてきだと思いました。また、今まで起きた出来事が、現状につながってしまうと聞いたときに、何かその時代にできることが、あったのではないかと思いました。実際自分がその状況になったことがないので、わかりませんが、自分の立場に置き換えると、とても大変なことが起きているのではないかと改めて実感が湧きました。
山本さんのお話から学生は広い視野を持つ大切さに気付くとともに、この先の生き方を考えるうえでも大いに刺激を得ていました。このような大変なときにもかかわらず、山本さんには2週にわたってご協力いただき、感謝申し上げます。