卒業論文「『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台地を追う」を巡って
2014/03/20
国際文化学科4年 北方 綾奈
私は観光文化ゼミ研究の集大成として何か形に残したいと考え、「『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台地を追う」というタイトルの卒業論文を書くことに決めました。
テーマをダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』に決めた理由は、まずゼミで研究していたパリを中心に物語が展開されていることでした。しかも、キリスト教の聖杯伝説の謎解きをテーマとし、日本人になじみの少ないキリスト教の歴史に関する情報が数多く書かれているのです。西洋文化を研究している者としては、どうしてもこの謎を解明したいという探究心に駆られました。
研究を続けているうちに、主人公が様々な観光地を駆け巡る内容が次第に気になり、実際の観光地と作中の観光地を比べて、舞台地に関する情報が真実なのかを検証してみようと考えるようになりました。そして最終的に「『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台地を追う」というタイトルで書き上げることにしました。
構想を練る時に、最も大変だったのは、主人公が巡ったパリ市内の距離感を意識することでした。これまでパリを訪れたことがなく、地図上だけで距離感を把握することはとても困難でした。そこで、主人公が辿る道筋を詳細な地図上で追いかけ、実感するように工夫しました。
作品の冒頭で主人公は、宿泊先のホテル・リッツ・パリがあるヴァンドーム広場にいます。そこから、物語が始まりクライマックスを迎える場所でもあるルーヴル美術館まで車で移動します。その道中、パリの名所であるチュイルリー公園、カルーゼル凱旋門などを通り過ぎ、それらを見た主人公は時間をかけて解説をしています。しかし、車での所要時間は作品を読み進めるだけではわからないので、逐一地図上で確認しながら作業しました。下の地図は冒頭で主人公が滞在していた場所と目的地、車中から見た名所です。
さらに、問題だったのは、日本人にとって有名な観光地でない場合、参考資料やWebサイトがほとんどないことで、フランス語などの現地語サイトや解説書を翻訳するのも大変でした。
こうして完成した卒論は、次のような構成となりました。
- はじめに
- 第一章 ルーヴル美術館
- 第二章 パリ市内
- 第三章 チューリッヒ保管銀行とシャトー・ヴィレット
- 第四章 イギリス
- 第五章 エピローグ パリ
- おわりに
- 参考文献
卒業論文を書き終えた今、なかなかテーマが決められず仕上がるかどうか不安だった私を最後まで指導してくださった藤田先生に感謝しています。卒論を書くことは大変でしたが、学生生活の総まとめをすることができ、とても良い経験になりました。
<付記>
私の卒論は、これだけでは終わりませんでした。2月18日から6日間、念願のパリに行き、実際に「『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台地を追う」旅をしてきました。主人公と同じように、パリ市内の道に埋め込まれた青銅のメダルを辿ることこそ時間がなくできませんでしたが、物語の舞台となったいくつかの観光地に行くことができました。どこも写真で見て想像していたよりもはるかに壮大で、感動の連続でした。
教会内に引かれた南北を示す子午線が、ダン・ブラウンによって“ローズ・ライン”と命名されたことでも有名なサン・シュルピス教会も訪ねました。作中では全く触れられていませんが、6世紀に建てられたこの教会は、ブルージュの大司教、聖シュルピスに捧げるために造られ、教会内部は幅58m、奥行き115mもあり、フランスの中でも最大級の大きさを誇っています。中にはドラクロワの素晴らしい壁画もあり、静かに鑑賞することができました。
また、主人公が警察から逃れるために立ち寄るサン・ラザール駅にも行きました。この駅の場面は映画版では省かれているため、外観や内部まで実に興味深かったです。主人公が滞在したホテル・リッツ・パリがあるヴァンドーム広場は、ガイドブックの情報通り高級宝飾店や高級ホテルが並ぶ華やかな広場でした。あいにくの雨模様でしたが、記念柱の天辺にある古代ローマ風の衣をつけたナポレオンの像が確認できました。公式サイトの通り、ホテル・リッツ・パリは休業中で工事用のフェンスに囲まれていました。
しかし、これらすべての中でも一番印象に残っているのはルーヴル美術館です。作中で重要な場面を彩るこの美術館では、想像以上の敷地面積と建物の大きさ、膨大な作品数にただただ圧倒されました。