オープンキャンパス(8/7)体験授業〜化粧文化学の紹介
2021/08/02
8月7日のオープンキャンパスでは、「お化粧についての学問とは」と題して体験授業を行います。ぜひ人間関係専攻の授業を体験してみてください。この記事では「お化粧」と学問について日ごろ感じていることの一端を記してみます。
新型コロナウイルスのためにマスクが日常化し、顔の半分以上がマスクで覆われる毎日を私たちは過ごしています。マスクから出ている部分は目・眉・額ですが、前髪があることでほぼ顔が隠れている人もよく見かけます。
いま、マスクによりコミュニケーションがとりにくいと感じている人が多くなっています。認知科学では、ヒトが生まれて目が見えるようになり、最初に獲得する認識はヒトの顔だといわれています。自分のことがまだ何もできない赤ちゃんにとって、世話をしてくれる人との意志疎通は生き延びるために欠かせないので、顔を読み取る力が必要だからです。コミュニケーションの基本であるこの顔の表情が、マスクで隠れてしまいます。
ところが日本の化粧文化では、顔の表情を隠す伝統が長く続いていました。平安時代の貴族から始まった白塗りのお化粧です。やがて下の階級にも普及し、大正時代頃まで1000年余り続きました。
そのお化粧は、眉を取り去り、顔全体にこってり白粉を塗り、眉を描く場合は(描かない場合が多かった)額上部の骨の上に描き、お歯黒をつけ、最後に口紅を点のように小さくつけて完成です。目元のメイクはなく、口元はお歯黒により泣いても笑ってもただ真っ暗な空洞です。厚い白塗りでは顔色も微妙な表情も隠れてしまいます。白塗りの時代はコミュニケーションに困らなかったのか。どうやってコミュニケーションをしていたのか。次々と疑問が湧いてきませんか。
このように化粧文化を探り始めると、たくさんの謎や発見があります。「化粧なんて学問になるのか」「そもそも化粧は文化と言えるのか」などと軽視されることも多いお化粧ですが、文化としてとらえ直して研究すれば、奥深い世界が開かれるのです。
(石田かおり)