講義「現代社会総合講座」に外部講師の方をお招きしました
2019/12/16
後期の現代社会総合講座Ⅱにおいても前期に続き、10月24日、10月31日の2週にわたって外部講師の先生を招き講義をしていただきました。
「現代社会総合講座」は人間関係学科(専攻)の特色ある授業の1つです。授業内容については、詳しくは前期の記事をご覧ください。後期は授業時間90分を前半と後半に分け、前半は映画に関する外部講師の方の講義、後半は講義を踏まえた質疑応答の時間とし、沢山の議論ができるようにしました。
今年度後期は「ドリーム(原題:Hidden Figures)」という映画(人種差別にさらされながらもアメリカの宇宙開発に携わり大きな功績を残した実在する3名の女性を描いたストーリー)を取り上げました。
今回の講師は、坂巻昌美先生(サントリーコミュニケーションズ株式会社勤務)、鷺谷万里先生(元日本IBM株式会社役員)にお願いいたしました。
坂巻先生からは、社会に出ると差別や障壁を感じる瞬間があるが、その際に「明るく前向きであること」、「自分自身が変化できること」が重要である等のお話をいただきました。鷺谷先生からは、差別が撤廃されるまで長い年月がかかること、日本はジェンダーギャップの大きい国であり性差別のある国であること、一方でバービー人形に多様性が生まれ始めたことなどを紹介されながら現代社会の実態やご自身の体験などについてご紹介いただきました。
授業に出席した学生からは以下のような感想や意見が寄せられました。
- 映画の中の女性も講師の先生方も、強い信念があったからこそ、黒人女性という差別、男女差別といったことがあったとしても仕事が続けられたのかなと感じました。私もちょっとしたことでも信念をもちながら仕事をしていきたいと思いました。
- 「逆境にさらされた時、一番大切にしていた信念や考え方はありますか」と私が質問した際に、「目標を定め、頼れるものにはしっかり頼る。悪いことがあれば良いことも必ずあるし、悪いことを活かして突き進む。人には頼るなという考えが存在しますが、他者に頼ることも必要であり、しっかりと感謝を伝えるべき」というお言葉をいただき、ただ逆境を恐れるのではなく困難な状況に陥ったからこそ得られるものがあるのだと感じました。 私もどこか「私のような人間は人に頼ってしまってはそれが相手の負担になってしまうのではないだろうか」という考えが頭の隅にありました。しかし改めて過去を振り返ってみると、他者に頼ると相手がいかに自分を大切に思ってくれていたかが分かり、むしろ一人で抱え込んでしまうことのほうがよほど相手に負担をかけてるのではないかと考えられるため、頼り頼られることは人間関係においてとても重要なことなのではないかと感じました。また頼られることは相手の幸せに貢献する行為に等しいのではないかとも考え、これから社会人として歩んでいく際にも頼り頼られる関係性を大切にしつつキャリアを積んでいきたいと思いました。
- 以前数個年上の男性から「何歳で結婚したいの」と聞かれた際に、「結婚の前にとりあえず大学を卒業してきちんと仕事したい」と答えると、「早くしないと婚期逃すよ。どうせ女は結婚して仕事を辞めるのだから、仕事よりも結婚でしょ」と鼻で笑われたことがある。私に対して悪意をもって言ったのではないと分かっていたのもあり、…(中略)…内心違和感を覚えながらも私は何も言えなかった。今思い返せば、その発言は男女差別そのものだった。私たちの若い世代は男女共に男女差別に対する問題意識がかなり薄い気がする。お茶汲みは女性の仕事、結婚や出産の後に女性が仕事を辞める、などといったことを「それが当たり前」だと考えている人が多いのが現状ではないだろうか。だから、当時の私のようにそもそも女性たちは差別されていると自覚をもたないし、男性たちもそれを差別だとは思わずに発言したり行動したりする。周りの話を聞いていてもそう感じることがとても多い。このままでは男女差別が完全になくなることはないだろう。
- 先生もおっしゃっていたが、差別はすべての人がもち合わせている本能に近いものであると思う。多くの情報を簡単に識別するには、偏見や先入観をもとに行うのが最も効率が良いからだ。私たちは、潜在的に差別を繰り返し、今日まで過ごしている。憧れる海外女優は白人が多いし、車の運転は男性、キャビンアテンダントは女性の方がいい。これらは「なんとなく安心する」から好む傾向になるのではないか。こうした当たり前から脱することが、差別をなくすことにつながるのではないか。
授業は大変盛り上がり、学生から質問が次々と挙がりました。中には、授業後に自ら講師の先生へ質問に行く学生も出るほどでした。講師の先生方には貴重なお時間を割いてご講義くださったことに、改めまして心より感謝申し上げます。
実は講師の先生方から「差別を感じたことがあるか」という質問が授業冒頭であったのですが、これに対して手を挙げた学生はほんの数名のみで、「差別を実感したことがない」学生が当初ほとんどでした。上記の感想のように、授業を受けていく中で気づきを得た学生もおりましたが、男女問わず、長い人生を歩むと様々な場面で差別に値する経験をするものです。受講した学生たちには、2名の外部講師の先生が授けてくださった知識や知恵を携え、困難に直面してもしなやかにその問題と向き合い、人生を生きていってほしいと願います。
(倉住友恵、小林憲夫)