―日本文化の紹介を通じて自分を知る―

国際日本学科 浅川 真知子

皆さんは「日本の文化について教えて!」と言われたら、何をどの程度語ることができるでしょうか。漫画やアニメなどのポップカルチャー、茶道や歌舞伎といった伝統文化に惹かれて訪日する観光客が多いことはご存知だと思います。近年日本の食文化も大変人気があります。2024年12月には日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。ニューヨークでは毎年お好み焼きやたこ焼きなどの「粉もの」イベントが行われています。日本の食文化は今後もますます注目を集めることでしょう。

私たちの日常生活には、長い歴史の中で培われ、誰もが当たり前のように感じている慣習や考え方が数多くあります。しかし、いざそれを海外の方に説明しようとすると意外と難しいものです。私の授業(「英語で日本文化」)ではその日のテーマについて英語で1分で説明する練習をします。神社参拝がテーマのときは、お辞儀をしたり手を叩いたり、まるでジェスチャーゲーム大会のような雰囲気になります。多くの学生がそこで初めて二礼二拍手一礼の作法やその意味について考え、自分の経験を振り返り、自分事として文化を構築していくのです。

これは何も伝統文化に限ったことではありません。例えば、「かわいい」という日本語は最近海外でも通じるようになりましたが、そもそも「かわいい」とは何を意味するのでしょうか。英語ではcute, pretty, lovely, adorable, charmingなどの訳がありますが、それぞれ少しずつニュアンスが違います。授業で学生にたずねると「母性本能をくすぐられるもの」「ときめくもの」「小さいもの」「ギャップを感じるもの」「ふわふわしたもの」「キラキラしたもの」などさまざまな意見が出て、議論が尽きません。

日常的に使っている言葉ひとつとっても、その捉え方は生まれ育った環境や経験によって大きく異なります。だからこそ、自分の考えや価値観を表現し共有することで、見えてくる自国の文化や自分自身の姿があります。英語力も大切ですが、それ以上に思考力や表現力、コミュニケーション力、省察力といったスキルが重要ではないでしょうか。生成AIを使えば一瞬で異文化に関する情報を集め、他言語に訳すことができる時代です。自分の言葉で説明し、互いの考えや価値観を共有することで、国際的な視野や発信力を磨いていきたいものです。

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