観光資源研究による学びの進化―「異文化交流」羽鳥 修(ハトリ オサム)
質問1:先生の自己紹介をお願いします。
羽鳥修です。専門はアメリカ合衆国の歴史、政治史及び文化・思想史です。「異文化交流」 「文化交流論(日本とアメリカ)」などを担当しています。地図を片手にアメリカを旅行するのが楽しみの一つです。
質問2:紹介する科目の目的と特長を教えてください。
アメリカ合衆国(以下、アメリカと略記する)は「移民の国」で、多人種・多民族国家です。従ってアメリカでは、過去から現在に至るまで異なる文化が出会い、交錯するなかで「アメリカ文化」が形成されてきました。授業ではアフリカ系、イギリス系、ドイツ系、アイルランド系、イタリア系、ユダヤ系、ヒスパニックを取り上げ、さまざまな異なる文化が交流する場としてのアメリカに焦点を当て、これらのエスニック集団がアメリカ社会に与えた影響を歴史的に考察します。併せて、授業では補助資料としてビデオやスライド等の映像資料を用いて彼らに関わる史跡や観光資源を解説します。
質問3:授業ではどんな工夫をしていますか。
授業で取り上げる史跡や観光資源を詳しく学ぶことで専門的知識とともに幅広い教養を涵養する一助となるように、補助資料としてビデオ等の映像資料を多用します。しかしただ映像を流すのではなく、重要な個所はビデオを止めて解説することでより深い学びにつながるよう心がけています。また授業では質問やクイズなど質問形式の課題に取り組みながら、「学びの輪」が広がることを意識して授業をしています。
毎回の授業後には感想や質問などを書く「コメントシート」を提出してもらい、次回の授業でフィードバックをしています。その意味で、講義科目ですが一方的に知識を教えるのではなく、学生と教員が一緒に授業を作り上げる「参加型、双方向型」の授業です。授業形態は「講義」ですが、双方向型および課題解決型の授業を行うため、ほぼ毎回の授業でペア・ワークおよびグループワークを行っています。
質問4:履修した学生の声を教えてください。
以下は「異文化理解Ⅰ・Ⅱ」の履修学生2名のコメントシートです。
- この授業を通じて、一つひとつの歴史的事象について、事象が起こった要因を歴史的文脈の中で解釈するとともに、それがその後の歴史とどのようにかかわっているのかについて解釈する手順を学びました。その際、根拠に基づいて歴史を説明できるかどうかが重要であり、自分がこれまで持っていた「外国」に対する漠然としたイメージだけではなく、政治的、宗教的な面など、さまざまな視点から物事を考えることが重要であると感じました。
- 私がこの授業で学んだのは、エスニックグループの歴史はもちろんですが、何よりも自分で調べて理解することの重要さです。もちろん今までも自分で調べることが大事なのは分かっていましたが、普段から自分で何かを調べるという機会があまりなかったため、自分自身でその重要さを実感することはほぼないに等しい状況でした。しかし、この授業が始まってから自分で調べる機会が増え、最初はノートの中からしか書いていなかった感想も、段々と自分で調べて深く理解してから書くようになりました。
その分課題に取り組む時間は掛かるけど、それ以上に自分で調べることの楽しさに初めて気がつきました。エスニックグループの歴史はこの授業を受けるまで触れることのなかった学びで、予備知識もなく分からないことばかりだったけど、だからこそ自分で調べて知ることが楽しく感じました。調べれば調べるほど新しい情報が出てきて、それぞれの移民が実際に歩んできた歴史を知り、面白い知識から残酷な歴史までたくさんの情報を知ることができました。
この授業を受けてなかったらきっと知ることのなかった歴史ばかりだけど、生きていく上で差別や虐殺などもう2度と起こしてはいけない歴史を知ることはとても重要なことだと自分の中で考えることができました。
授業中の先生の話もとても面白くてもっと詳しく知りたい情報がたくさんあり、自分の中で気になったことをノートにメモをして課題に取り組むときに一緒に調べる習慣も付きました。自分がまだ生まれていなかった歴史の知識を知っていくのはどこか不思議な気分で本当にこんな酷いことが起きていたのかと実感できない歴史もたくさんあったけど、そう思ったことは必ず後でゆっくり調べるようにしたことにより、より一層深いところまで知ることができ、その情報に対する自分の考えもたくさん持つことができました。一つの授業で自分の取り組む姿勢がここまで変わると思わなかったほど、自分で調べることの楽しさと重要さを学ぶことができました。
フリーダム・トレイル
(アメリカ独立に関連する16か所の史跡を巡るルート)
フリーダム・トレイル
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