東京観光財団連携で学生が子ども向けまちあるきの企画運営に取り組みました。
2026/06/12
東京観光財団「協働型課題解決ワークショップ」観光文化学科ゼイヤーゼミ活動報告
ゼイヤーゼミではフィールドワークという調査手法の実践を通して、地域を「外から眺める対象」としてではなく、そこに暮らす人びとの日常や記憶、語りの重なりとして捉えます。そして、この視点を観光文化の学びに生かし、小平市のまちを歩き、地域の方々の声を聴き、子どもたちに伝わる形へと表現する活動に取り組みました。

キックオフ会議
観光まちづくり協会のまち歩き講座
地域と大学が協働する学び
本活動は、公益財団法人東京観光財団が主催する学生インターン事業「協働型課題解決ワークショップ」の一環として実施されました。都内の観光協会が抱える課題に対して、大学ゼミが半年以上をかけて協働で取り組み、学生ならではの視点から地域の魅力発信を考える実践型の学びです。
2025年度、観光文化学科ゼイヤーゼミは、一般社団法人こだいら観光まちづくり協会と連携し、「観光を切り口とした、若年層への小平というまちの魅力浸透」というテーマに取り組みました。小平には豊かな地域資源があります。しかし、身近な場所であるからこそ、子どもたちや若い世代にとっては、その魅力が見えにくい場合もあります。そこで本ゼミでは、小学生が楽しみながら地域を再発見できる「まち歩きクイズラリー」の調査・企画・実施に挑戦しました。
小平のまちを、自分の足で読み解く
ゼイヤーゼミの学びの中心には、文化人類学や社会学の方法に基づくフィールドワークがあります。フィールドワークとは、現場に出て、自分の目で見て、足で歩き、人と対話しながら、地域の意味を少しずつ理解していく方法です。観光地として有名かどうかだけでなく、そこに暮らす人びとにとって大切な場所はどこか、どのような記憶や物語が残されているのかを考えることが重要になります。
プロジェクトは夏のオリエンテーションから始まり、秋から冬にかけて合計4度の現地調査を行いました。はじめは小平市内を広く歩き、その後、対象地域を少しずつ絞り込みました。観光協会の担当者と相談を重ねながら、市境にある二市のマンホール、江戸時代から地域を支えてきた小川用水、市ゆかりの彫刻家による屋外彫刻など、子どもたちが「いつものまち」を新しい目で見られるスポットを選びました。
調査を重ねるなかで、ゼミ生たちの視点も変化していきました。最初は「観光資源」を探す作業として歩いていた学生たちが、次第に生活道路の使われ方、地域の方の何気ない一言、昔のまちの記憶に関心を向けるようになりました。これは、文化人類学でいう「参与観察」に近い学びです。地域の中に入り、相手の立場に少しずつ近づきながら、自分の見方も変えていく経験になりました。

レンタルサイクルによる広域調査
地元への聞き取り調査
ゼミ生の声(Nさん3年生・まち歩き調査班)
「最初は『観光資源リスト』を埋めるように歩いていました。でも、地元の方から昔の話を聞くうちに、リストにない情報こそ面白いと気づきました。そこからまちの見方が変わったと思います」
「子どもに伝わる言葉」へ翻訳する
今回のイベントでは、対象を小学校3・4年生に設定しました。そこで大きな課題となったのが、大人向けの地域史や観光情報を、9歳から10歳の子どもにも分かる言葉へ置き換えることです。専門的な言葉をそのまま説明するのではなく、「なぜ面白いのか」「どこを見れば良いのか」「自分の生活とどうつながるのか」が伝わる表現にする必要がありました。
ゼミ生たちは、13の立ち寄りスポットについて、難易度別のオリジナルクイズを作成しました。あわせて、手描き風のイラストマップ、保護者向けの参加案内、安全面に配慮した説明資料も学生主体で準備しました。観光プロモーションという言葉の中には、調査、企画、文章作成、デザイン、関係者との調整、安全管理など、多くの仕事が含まれています。学生たちは、作りながら考え、直しながら学ぶことで、実社会につながる力を身につけていきました。

まち歩きイベントのチラシ
まち歩きイベントのチラシ
イベント当日、学生たちは「伝える側」へ
初春の日曜日、市内の公立小学校に通う3・4年生とその保護者を対象に、まち歩きクイズラリーを実施しました。受付、各スポットでの解説、クイズの出題、安全確認、ゴール後の景品贈呈まで、運営の中心をゼミ生が担いました。
当日の学生たちは、半年前に初めて調査に出た時とは大きく違っていました。小学生の目線に合わせてしゃがみ、相手の反応を見ながらヒントを出し、「知らなかった」「次はどこに行くの」といった声を受け止めていました。学んだ知識を一方的に説明するのではなく、子どもたちの発見を引き出す姿勢が見られました。これは、観光を通じて人と地域をつなぐ実践そのものです。

まち歩きイラスト地図
スタンプラリー冊子
ゼミ生の声(Fさん3年生・クイズ・マップ制作班)
「子ども向けのクイズなら簡単だと思っていましたが、普段使っている言葉が小学生には伝わらないことに気づきました。何度も書き直す中で、相手に合わせて伝える難しさを学びました」
「やって終わり」にしない学び
最終報告会では、成果だけでなく課題も共有しました。猛暑による調査開始の遅れ、学校側との調整、開催日の設定、子ども向け表現の難しさなど、実際に取り組んだからこそ見えてきた問題がありました。ゼイヤーゼミでは、活動を実施して終わりにするのではなく、うまくいった点と改善すべき点を言葉にし、次の実践へつなげることを大切にしています。
フィールドワークの学びは、教室の中だけでは完結しません。現場に出ると、予定通りに進まないこと、相手にうまく伝わらないこと、自分の考えを言葉にしなければならない場面に出会います。そうした経験を通じて、学生たちは「地域を読み解く力」「人と協働する力」「価値を企画し、形にする力」を育てていきます。

イベント当日の様子
最終成果報告会
ゼミ生の声(Fさん3年生・クイズ・マップ制作班)
「当日、ある女の子がクイズに全問正解して「次はどこ?」って何度も聞いてくれて。あの笑顔を見たら、夏からずっと準備してきてよかったって、心の底から思いました」
観光文化学科で育つ力
今回の活動で身につけた力は、観光業界だけでなく、ホテル、航空、自治体、地域づくり、メディア、商品開発など、さまざまな分野で求められる力です。地域の魅力を見つけること、人の話を丁寧に聴くこと、相手に届く言葉で伝えること。これらは、観光文化を学ぶ学生にとって重要な基礎になります。
駒沢女子大学 観光文化学部 観光文化学科では、地域社会と関わる実践的な学びを通じて、学生一人ひとりが自分の関心を深め、将来の進路を考える力を育てています。ゼイヤーゼミの活動は、観光を「場所を見ること」だけでなく、「人と地域の関係をつくること」として学ぶための取り組みです。
観光文化学科 ゼイヤー ウィン


