日本語の中の囲碁・将棋
2016/10/19
松村 良
囲碁も将棋も古代に中国から日本に伝わってきたゲームですが、庶民の娯楽として、日本各地に広まっていきました。日本語の中には、囲碁や将棋に由来する言葉がいろいろ残っています。ここでは幾つかそういう言葉を紹介してみたいと思います。
まず、囲碁由来の言葉でよく使われているのは「駄目」という言葉でしょう。囲碁は碁盤の線の交点に黒石と白石を交互に打ち、自分の石で相手よりも多くの交点を囲ったほうが勝つという陣取りゲームなのですが、その囲ったお互いの陣地の交点のことを「目(もく)」と呼びます(碁盤はタテヨコ19本の線が引いてあり、全部で361目(もく)の交点が存在します)。そしてお互いの陣地にならない、黒石と白石の間の部分の交点のことを「駄目(だめ)」と言うのです。むだなことや、してはいけないことを「ダメ」というのは、ここから来ています。
また、対局者に実力差がある場合、囲碁では「置き石」というハンディキャップをつけて対戦します。強い人が白石を持ち、弱い人があらかじめ先に幾つか黒石を置くのが「置き石」なのですが、この置き石も「目(もく)」と呼びます。「一目(いちもく)置く」という言葉は、「自分よりすぐれている者に対して、敬意を表して一歩譲る」(『日本国語大辞典』)という意味なのですが、これも囲碁由来の言葉です。
将棋由来の言葉としては、「王手」や「成金(なりきん)」がよく使われます。次に相手の王将を取る手を「王手」と言うのですが(将棋は相手の王将を取れば勝ちです)、そこから次の試合で勝てば優勝という時に「優勝に王手をかける」と表現したりします。また、将棋は将棋盤の線と線のあいだのマス目に駒を置くのですが(将棋盤はタテヨコ10本の線が引いてあり、マス目は9×9で81マスです)、自分の手前の三列分のマスが自陣、相手の手前の三列分のマスが敵陣になります。敵陣に自分の駒が入ると、王将と金将以外は「成る」(=駒の動かせる場所が増える)ことが可能ですが、歩兵・香車・桂馬・銀将の四つの駒は、いずれも金将に「成る」ことが出来ます。ここから普通の人がいきなり大金持ちになることを「成金」と言うようになりました。他にも高圧的な態度のことを「高飛車」と言ったりしますが、これも将棋由来の言葉です。
言葉の由来を知ることは、日本語や日本文化をより深く知ることにつながりますよ。