国際文化学科教員による授業紹介リレー No. 6 「国際法」

国際関係コース 福王 守

駒女の国際文化学科を特徴づけるキーワードは、世界・言葉・文化です。これらは決して独立したものではなく、密接な関係をもって3つのコースの各学問分野を基礎づけています。ここでご紹介する国際法は、特に「世界」との関わりから国際関係コースの専門科目として位置づけられています。第3回目の国際政治のご紹介からは、常に変化し続ける複雑な国際社会を歴史・言葉・文化などの知識を総動員して動的に分析している様子がよく分かりました。このような分析を十分に踏まえつつ、国際法は将来あるべき社会を目指して交わされる、国同士の約束であるといえます。その意味で法は政治を完成させるための静的な手段ともいえるでしょう。

法とは何ですか

法は、私たちの社会をよりよく営むための一手段です。今日の社会は市民社会と呼ばれ、人々が互いに協力と共存を図りながら営まれてきました。一方で、私たち一人ひとりが大切にされるためには、時に「〜すべきである、〜すべきでない」といった命令要素を含んだ理念(社会規範)も必要とされてきたのです。その中でも、法は次の特質をもっているといわれます。それは、もしもその約束を破ったならば、誰に対しても等しく社会全体(国家)から害苦としての制裁が予定されているという点です。犯罪と刑罰の関係を想像すると、分かりやすいかもしれません。

人文学部で法を学ぶ意味は何ですか

人文学部では広く社会、言語、文化、歴史等をバランスよく学ぶことができます。法律学においても、市民とは理性を本質とした「人格」の担い手を意味しており、「人間の尊厳(human dignity)」の実現を市民社会の目標としています。2009年から実施されている裁判員制度は、まさに一般市民の優れた「理性」を司法に反映させる目的で設置されたものです。ですから、人文学部生が広い素養と優れたバランス感覚を養いつつ法律学の基礎を身につけることは、一市民として大切であるのみならず、変化し続ける社会の中で法を適切に運営するために重要であるといえるのです。

国際法とは何ですか

国際法とは、主に国家と国家を結びつける法規則をまとめた呼び方です。国際法は文書の形式による「条約」と不文の「慣習国際法」から成ります。変化し続ける国際社会の歴史の中で、国境を越えた共通の法は徐々に形成されてきました。この講座は、現代の国際社会を国際法という枠組を通して構造的に把握することを主な目的とします。

どのようなテーマを扱うのですか

前期授業では、国内社会と国際社会の違いについて、近代以降の市民社会の変遷を踏まえながら知識を習得し、問題分析の方法を学びます。例えば、条約については日本の安全保障の問題を、また慣習国際法についてはアフリカの人種差別と民族自立権の問題などを扱っています。また、国家の権利と義務を確認した上で、旧ユーゴ紛争とスーダン問題を通じて国家の成立と消滅について触れます。その上で、国家の領域との関連から海洋法と資源管理の問題を学びます。

後期の授業では、地球規模で進行する問題の解決に向けた国際法の役割を伝えていきます。世界人権宣言と国際人権規約の意義を理解した上で、人間の尊厳の普遍性という観点から人権保障問題を考えます。次に、「人類の共同財産」という価値観から地球環境について学びます。先進国と途上国の格差と環境問題との不可分性を確認した後に、「人類の共通の関心事」とされる開発と保全の問題を検討します。その上で、最後に国際紛争の平和的解決のための課題について考えます。今日の国際社会では、「武力行使の禁止」が慣習国際法としても確立しているといわれています。にもかかわらず、今でも私たちは戦争の危機に直面することがあります。核兵器使用や、国連の集団的安全保障の問題を通じて、人類の平和的共存に向けた法的課題を受講生とともに考えていきます。

教員の声 :新着投稿