日本においしい食材を伝えた中国僧
2014/08/25
今年の夏は、猛暑の日が多くありました。こうした真夏の昼下がりに、冷やしたスイカをガブリと一口たべると、のどの渇きをいやしてくれます。
スイカの原産地は、アフリカといわれています。紀元前にはインドに伝わり、11世紀にはシルクロードを経由して中国に伝わりました。そして、江戸時代初期に日本にもたらされました。つまりは、世界一周の歴史をもつ食べ物です。
では、スイカはいつ頃、誰によって日本にもたらされたのでしょうか。
それは江戸時代の承応3年(1654)に中国から日本に来た禅僧の隠元隆琦です。
隠元さんは大変博学な人物で、当時の中国仏教界の高僧でした。来日して数年後には帰国する約束でしたが、江戸幕府の四代将軍徳川家綱をはじめ、日本の多くの仏教僧たちなど、多くの日本人から慕われ、八二歳で亡くなるまで日本にとどまりました。隠元さんが多くの日本人から慕われた理由としては、多くの文化を日本にもたらしたこともあげられます。
スイカとともに、名前の由来ともなったインゲン豆、孟宗竹(たけのこ)、レンコン、ナスなどの食材、煎茶というお茶の飲み方、ごま豆腐、精進揚げなどからなる普茶料理です。普茶料理がもとになり、現在の精進料理ができたといわれます。この他、身近な日用品としては居間の円卓であるちゃぶ台、作文などを書くときに使用する原稿用紙などです。
このように、隠元さんは現代の私たちの生活にも生きているおいしい食材などをもたらした禅僧なのです。
(皆川 義孝)