お坊さんとファッション
2014/11/20
僧侶のファッションというものは、良い意味でも悪い意味でも目立つようです。街中を歩いていると見知らぬ方から、「お坊さんですよね。ちょっと質問があるのですが…」などと気軽に声をかけられることもあります。ファッションひとつで初対面の方と親しくしていただけるのは、実に楽しいもの。ただ僧衣は結構バサバサするので、動きづらいという欠点もありますが…。
飛龍の袈裟(部分)
絡子(らくす)
お坊さんの衣や袖(そで)が比較的ゆったりと作られているのには、実は重要な理由があります。それは「不殺生戒(ふせっしょうかい)」という第一戒律に“絶対に暴力をふるわない”という戒めがあるからです。バサバサした大きめの衣装によって行動を制限しようとするものです。お釈迦さまは生涯、自らの教えをあくまでも言葉のみによって広めようとつとめたのでした。
この世でもっとも影響力のあるもの、それが言葉なのです。つまり僧衣は、「私は言葉を大切にします」という宣誓でもあるのです。
数種類の僧衣のうち、「袈裟(けさ)」のことをサンスクリット語で「カシャーヤ」といいます。これは「中間のあいまいな色」という意味です。したがって袈裟は「壊色(えじき)」ともいわれます。
仏教では、本来身にまとう衣に青や赤といった原色を嫌いました。お釈迦さまは人々が捨ててしまったボロ切れや端布を大切に集め、パッチワークのように縫い合わせてお袈裟として身に付けたからです。いわゆる「糞掃衣(ふんぞうえ)」がそれで、大地の色や汗やホコリ、人々の生活そのものが染みついた色こそ、真に尊い色であるというメッセージがそこには込められています。
少し昔の話ですが、ロサンゼルスを衣姿で歩いていますと、見知らぬ数人の女性から「Oh!カーテンマン!」と微笑んで話しかけられて、とまどったことがありました。そこで翌日に寺院での作業服にあたる作務衣(さむえ)を着るようにしましたら、今度は「ニンジャ!ニンジャ!」と騒がれて、大勢の若者たちに囲まれてしまいました。お坊さんのファッションは、けっこう笑顔の和を広げてくれるもののようです。
新デザインのTシャツ
(日本文化学科 千葉 公慈)