ドイツで暮らして —2001年3月卒業のバスティアン幸子さん—

国際文化学科の卒業生には、卒業後国際結婚をして海外で暮らしている人達がいます。その一人、バスティアン幸子さん(旧姓米山さん)を紹介いたします。ご主人のゲオルク・バスティアンさんは、ドイツの大学で物理学の教授をしていますが、昨年11月から3か月間日本の大学で研究する機会があり、家族と一緒に日本に滞在していました。帰国間近の1月末に二人で研究室を訪ねて来てくれたので、卒業後の生活、大学時代の思い出についてインタビュー形式で書いてもらいました。

Q 自己紹介をお願いします。

A はじめまして。駒沢女子大学国際文化学科を2001年に卒業しましたバスティアン幸子です。卒業決定後、ドイツ人の彼と暮らすためにドイツに来て、早13年が経ちました。日本に住んでいた年月の半分以上をもうドイツで過ごしていることになります。家族構成は夫、10歳の長女、7歳の長男との4人家族です。日本ではずっと実家に住んでいましたが、ドイツに来てからは主人の仕事の関係でシュトュットガルト、カールスルーエ、トリアーと3回引っ越しをし、今はドイツ中西部、オランダ国境に近いKleveクレーフェという人口5万人の小さな町に住んでいます。オランダ国境の町なので、町ではあちこちでオランダ語を耳にします。今はクレーフェにある大学で希望者に日本語を教えています。

  • 左からレオナちゃん、幸子さん、ゲオルクさん、アントン君
昨年12月奥多摩湖にて
    左からレオナちゃん、幸子さん、ゲオルクさん、アントン君
    昨年12月奥多摩湖にて

Q ドイツでの暮らしが13年と随分長くなりますが、ドイツ生活の良い点、日本との違いはどういうところですか?

A ドイツは日本と違い地方分権国家であるため、いろいろな決定が日本よりもスムーズに進むので、改革が進みやすいのが良いことだと思います。また、自己主張の強い国民性なので、意見がはっきりしています。最初から駄目なものにはNein! とはっきり言ってくれるので、余計な期待をしないでいいというか、付き合い易いです。

またドイツはイタリア、ギリシャ、旧ユーゴ圏、トルコからの移民が多い移民社会です。日本にいたら接する機会がない外国人の方と接する機会があるというのは貴重な体験です。ちなみに私が住んでいるあたりはトルコからきたクルド人やロシア系ドイツ人、ポーランド人が多いです。

大きな町でも少し歩けば森があり、自然を身近に感じられるのが気に入っています。

Q 外から日本を見て、日本・日本人のどこが良いと思いますか?

A 個人主義のドイツに住んでいると、日本人のまわりと一緒に助け合うということが恋しくなる時があります。日本の自治会、自治会主催のお祭りなどはこちらではないです。

やはり、サービス、日本的なおもてなしでしょうか。サービスも行き過ぎるとお節介になるかもしれませんが、日本のサービス、心遣いに慣れていた身としては、ドイツに来たばかりのころは大変でした。

お店が日曜日も開いているというのがいいなあと思います。特に日本に3か月滞在して帰ってきた今、日曜に何をしようか、と手持無沙汰です。

Q 今回3か月日本で暮らしてみてどうでしたか? 子どもたちは日本の学校生活に慣れましたか?

A あっという間の3か月でした。3か月も日本に滞在するのはドイツに渡ってはじめてのことなので、刺激的でした。私自身日本人っぽくない行動をすることもあり、外見は日本人でも中身はドイツ化している、と感じました。

長女は小学校4年生、長男は小学校1年生に転入しました。(ドイツでは二人とも夏生まれなので、一学年上の5年生と2年生です。)まず通学が心配でした。ドイツでは息子は車で送り迎えをしていますので、25分も歩いてくれるだろうかと。そんな心配も無用でした。一度も欠席せずに、3か月間毎日通うことができました。

日本の学校は担任の先生が細かなところまで世話をしてくれるので、息子も娘もすぐにクラスに馴染むことができました。ドイツでは日本語補習校が近くになく、通っていませんので、どうしても漢字があまり読めません。先生はテストの度にふりがなをふってくださり、答えることができました。ドイツでは普通は給食がありません。二人ともお昼には学校が終わるので、日本の午後3時まである授業は大変だったようですが、全体的に楽しんでいたようです。

Q 大学時代はどのように過ごしていましたか? 特に思い出に残っていることは?

A 駒女に通っていたころは一番勉強をした時期であったと思います。1年生の渡辺修先生の基礎ゼミが特に印象に残っています。高校までは討論をする機会はなかったのですが、基礎ゼミで毎回最新のニュースについて学友と意見交換をしたり、調べたりすることがとても新鮮でした。この時のゼミ仲間とはいまでも交流があります。

加藤先生のスペイン・中南米ゼミも楽しかったです。りんどう祭でのタコス販売は毎回好評で、完売でした。学生時代はスペイン語の授業が大好きで、その後スペイン語とはかなり遠ざかっていたのですが数年前キューバに旅行をした際に、レンタカーでキューバを半周し、現地の方とスペイン語で話すことができました。意外とまだ覚えているものだな、と驚きました。

  • 懐かしい加藤研究室にて
    懐かしい加藤研究室にて

Q 国際結婚や海外での生活に憧れる駒女生に対してアドバイスをお願いします。

A 国際結婚に関してですが、結婚をする前に一度一緒に住むことをお勧めします。同じ文化のなかで育っている日本人の間でも結婚生活が破綻する中で、違う文化、違う価値観のなかで育っている二人の結婚には常にお互いの努力が必要です。日本人同士でいう暗黙の了解はありません。

長い人生の中で、海外生活は外から日本を見てみるという意味でもいいことだと思います。そして英語ができて悪いことはありません。ドイツ生活を満喫していますが、ときどき日本のコンビニ、お弁当、豊富な出前など恋しくなります。やはり日本は便利だなと思います。

みなさんも機会があれば積極的に海外に足を運んでみてください。

国際文化学科 2001年3月卒業  バスティアン 幸子

<付記>

米山幸子さんは、スペイン語を2年間、スペイン・中南米ゼミを2年間担当しました。スペイン語は常にほぼ満点、ゼミでも支倉常長のスペイン・ローマへの使節団のことを熱心に調べ、卒論を書きあげた優秀な学生でした。卒業式も待たずにドイツへ飛んで行ってしまい、どのような生活をしているのかゆっくり話を聞くこともなく10年以上経ってしまいました。今回久しぶりに会うことができ、様々な経験を経て落ち着いた大人の女性として成長した姿に接し、とても嬉しく思いました。

ちなみに、ゼミは10人でしたが、英語やスペイン語を実際に使って国際交流をすることに関心のある活発なメンバーが揃っていました。

国際文化学科  加藤 ナツ子

卒業生の声 :新着投稿