卒業生インタビュー ~青年海外協力隊員新野佐和子さんにきく~ Part 2

2015年3月に国際文化学科を卒業した新野佐和子さんは、同年秋から青年海外協力隊員としてペルーに赴任しています。前回のPart 1では、新野さんの大学時代と協力隊員として派遣されるまでについてお聞きしました。Part 2では、派遣されてから今までのこと、さらには将来のことも語ってもらいます。最後にこれから国際文化学科を受験する方々へのアドバイスの言葉もあります。

Q 現地でいちばん苦労したことは何ですか?

スペイン語でのコミュニケーションです。最初は、ステイ先の家族や職場の同僚が言っていることが正確には理解できず、何度も言い直してもらわなければなりませんでした。時には誤解していたり、理解できているのに思いが表現できなかったりの繰り返しでした。「この人はスペイン語ができないよ」とか「理解できていないな」などという発言を何度も耳にしました。そのような言葉に限って理解できてしまうのです。その度に傷つき、自己嫌悪の日々を過ごしたこともありました。

それでも、教えてもらいながら、めげることなく努力を続けていると、まわりの人や学校の生徒たちともコミュニケーションがとれるようになり、楽しく過ごせるようになりました。この経験から学んだのは、人々に受け入れてもらうには、言語よりも大切なことがあるということです。それは、「笑顔」と「姿勢」です。人には笑顔で接し、教えて頂いているという謙虚な姿勢でいることが私のモットーになりました。外国人だからといって特別扱いされるのは嫌です。ここで生活するには、教えて頂かなければならないことが山ほどあります。「笑顔」と「姿勢」があれば、言葉はわからなくても誰もが親切に、ゆっくりとした口調で、多くのことを教えてくれます。このモットーのおかげで、赴任から1年を過ぎた今でも、皆さんにとても良くしてもらっています。

Q 思い描いていた協力隊員生活と実際のそちらでの生活にギャップはありませんでしたか?

協力隊員の生活については、水も電気もない場所で、日本の人々とも連絡がとれず、それでも果敢に生きていくという姿を想像していました。電気は、雨が降りすぎたときや、風が強い日に停電することはありますが、日常生活に不自由することはありません。水は乾季後半(9月後半~11月下旬)になると枯れてしまうので、一日に1~3時間しか使えませんが、雨季に入るとまた水が出るようになります。通信速度は遅いですが、インターネットも使えるので、日本の家族や友人とも連絡を取り合っています。想像していた協力隊員の姿に比べると、苦労は少ないと思います。

ここでの暮らしを「苦しい」と感じることはありません。むしろ、「人間らしくていい」と気に入っています。自分の手で洗濯することで衣服に愛着がわいたり、動物の形が残っている肉を調理することで食べ物のありがたみを感じたり、気兼ねなく水が使えることは幸せだなあと思ったり、日本で生活していては分からないことに数多く気がつきました。

Q 3月まで学校は休みだそうですが、どのようなことをして過ごしますか?

地域の子ども向けに、英語・日本語教室を週に2回行う予定です。学校は休みですが、配属先の役所は通常業務なので、役所のプロジェクトを手伝いながら、大人・家庭向けの菜園普及活動、3月末からの学校菜園プロジェクトに向けての準備を行う予定です。

Q 少し難しい質問になりますが、現地の人々の健康や教育について、海外からの協力や援助は欠かせないと思いますか?

まず、私の任地に限ってのお話しであることをお断りしておきます。当地については、海外の協力が絶対に必要であるとは断言できないと、考えています。しかし、外国人がいることによって可能性が広がることは確かです。日本に住んでいても同じです。住み慣れた地域や食べ慣れた食品に違和感を覚えたり、特別なものであると認識したりするのは難しいはずです。しかし、よそから来た人によって景色の美しさや、日常的に作られている手工芸品の価値が見いだされ、住民の自覚が生まれます。農作業についても、「寒さを凌ぐために、日本ではこんな方法を使っています」と紹介することもできるわけで、その方法が効果的であると判断された場合は、永く利用し続けてくれるはずです。

食生活に関しても同じことが言えます。これまで食べ続けてきた食品を、不健康だとは感じません。そこによそ者が入って、「私の国ではこんな食事をしていて、それが健康増進に寄与している。今の食事にこれを足してみてはどうだろう?」と、提案することができます。それが受け入れられるかどうかは、私と当地の人々との信頼関係に深く関わってきます。実際、肥満に悩んでいる友人に日本食の調理法や野菜の食べ方をいくつか紹介してみました。彼女はアドバイスを受け入れ、ダイエットを継続してくれています。

だまされていると思われないように、そして本当に実践してもらえるように、私の活動において信頼関係の構築は非常に重要です。ここでの生活を通して、そのことを身に染みて感じています。私自身の活動に限定すれば、役所の同僚や訪問校の先生方は菜園活動を継続したいと言ってくれています。

Q 任期が終わった後、また同じような活動に従事したいと思いますか。その場合、どんなところで、どのような活動をしたい、あるいはする必要があると思いますか?

今のところ、全く異なる仕事に就きたいと考えています。国際協力に関する活動をしたくないというのではなく、これまでとは違う角度から国際協力を考えたいからです。

もちろん、海外と繋がりのある仕事、外国語を使う仕事に就きたいという思いは変わりませんし、最終的には国際協力に関わる活動がしたいと思っています。いつかは、教育に関する活動に従事できればとも考えています。

学校を巡回しながら、教育環境や就学困難などの問題を数多く見てきました。私にも何かできることはないかと考えます。支援の必要があるかどうかは、地域の事情によりけりです。ここでは、多くの先生や保護者が改善を望んでいますが、地域の行政が全てを賄うのは困難なので、何かしらの援助があると良いのではと考えています。

Q 最後にこれから国際文化学科を受験する高校生のみなさんにアドバイスをお願いします。

大学入学にあたって、「こんなことに挑戦したい」と具体的に考えている人もいるでしょうが、「何がしたいのかわからない」という人も少なくないと思います。私は、前者でありながら、同時に後者でもありました。勉強したい、チャレンジしたいと思うことはありましたが、具体的にどうすればよいのかわからない、ここで何ができるのかわからない、という状況でした。

駒沢女子大学には、迷い・悩んでいる学生の話を親身になって聞き、解決策のヒントをくださる、そんな素敵な先生が沢山います。同じような想いを抱き、語り合える友人に出会うこともできます。少人数制だからこそ、自分にあった学びと多くの素敵な出逢いを実現することができます。その時、その時に、自身ができることを一生懸命行うことで、思いもしなかった、しかし、真に自分が輝ける何かを見つけることができるはずです。国際文化学科を受験されるみなさんのご健康と、そしてキラキラと輝く自分らしい大学生活を心より祈っています。


新野さん、貴重なお話をありがとうございました。残りの1年間のご活躍をお祈りいたします。

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