初の試み、資生堂寄附講座を始めて

今年4月から新たに開講した「化粧文化論」は、駒沢女子大学にとっても、資生堂にとっても、そして担当者である私にとっても、初めての寄附講座です。開始時は、学生のみなさんも「どんな授業が始まるのだろう」とドキドキ・ワクワクでしたが、それは資生堂からの参加者も私も同じでした。

そもそもなぜ、資生堂寄附講座が始まったのか。こんな理由があります。経団連による調査で、企業が大学生を採用するときに重視する項目のトップにコミュニケーション力が挙がったように、社会生活にとって重要なコミュニケーション力は人間関係学科の学修の主軸です。言語やメディアによるコミュニケーションと並んで、身体表現によるコミュニケーションにも重点を置いています。ここが他大学のコミュニケーション学修とは大きく違う特色です。身体表現とは、たとえば、言葉遣い、姿勢、仕草、表情、服装、髪型、化粧などで、これらに対応した科目を揃えました。「化粧文化論」もその1つです。

学生は女性だけという女子大学の利点を最大限にいかして、お化粧のプロの指導を受ける実践的な授業、アクティブラーニングを企画し、実習部分の指導者を企業に求めました。授業の担当者である私が資生堂客員研究員であり、20年以上も資生堂とともに仕事をしていることから、資生堂に協力を求め、快諾を得て実現しました。

授業内容は次のようなものです。

最初に皮膚の構造や化粧品の基礎知識など、もっとも基本的な理論を学修した後、資生堂ビューティースペシャリストの指導で、洗顔方法の基本、スキンケアの基本、社会人としてふさわしいメーキャップの基本(そのまま「就活メーク」に使える)、冠婚葬祭など社会人に必要な場面別の応用メーキャップを実習します。これで、社会人として、消費者として、化粧や化粧品についての一通りの知識と技術が修得できます。

洗顔フォームを泡立てる実習風景と学生の声

  • 洗顔フォームを泡立てる実習風景と学生の声
  • 洗顔フォームを泡立てる実習風景と学生の声

メーキャップ実習の風景と学生の声

  • メーキャップ実習の風景と学生の声
  • もともとやり方もわからないまま何年も化粧をしていたので、きちんと化粧について知る良い機会でした。(Y.T.さん)
  • ふだんメークをしていてこれでいいのかなと不安だったところがすべてわかりました。(A.T.さん)
  • 就活用のメーキャップや印象をよくするメーキャップの術をたくさん教えてくれてありがとうございました。どれもすぐ実践できるもので助かりました。(N.F.さん)

後半は応用学修です。

まず、私たちが毎日着ている服であるリアルクローズの流行が、どのように作られ、どう流れて来るのか、ファッション産業の仕組みを知り、ファッションの一部である化粧品とその宣伝がどのように作られるかを知ります。それと並んで、アートとしての化粧作品とその創作過程にも触れます。これらを資生堂シニアヘア&メーキャップアーティストが説明します。パリ・コレクションなどの世界の第一線で活躍中の社会人の話を聞くことは、生きた社会に触れることにもなります。今年度は大学生世代にファンが多い「マジョリカ・マジョルカ」というメーキャップブランドを担当している百合佐和子さんにおいでいただいているので、学生自身が日ごろ親しんでいる化粧品の背景を知ることができます。

  • アーティストによるレクチャー風景
    アーティストによるレクチャー風景

アートとしての化粧作品に刺激を受けたところで、こんどはグループワークでヘアとメークによる創作をします。発表会では互いに投票してグランプリを決めるだけでなく、資生堂シニアヘア&メーキャップアーティストから講評もいただきます。どんな作品を創作するか楽しみですが、まだ発表会前ですので、次の報告をお楽しみに。

最後に、日本社会での化粧の意味について、子どもの化粧や電車内化粧も含めて考えることで、自分自身の化粧の意味を振り返り、15回にわたる授業の総まとめとします。

(石田かおり)

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