幸せになる(?)ための心理学

私が担当している臨床心理学のゼミでは、少人数制であるメリットを活かしてディスカッションを行っています。でも「ディスカッション」なんて言われたら、たいていの人がひるんで口をつぐんでしまうでしょう。そんなことにならないよう、毎回のゼミのはじまりは軽いウォーミングアップとして、あまり小難しくない、日常に役立ちそうな心理学のトピックを取り上げて、ゼミ生のみなさんとあれこれ「おしゃべり」しています。

そのトピックとして最近取り上げた本は、いわゆる「ポジティブ心理学」と言われるものです。心理学、とりわけ「臨床」心理学では、心の暗い側面や「病(やまい)」に目を向けることが多くなりがちですが、そればかりじゃバランスが取れないということで、どのような心がけや生き方が心の健康にプラスに働くのかということについて、データに基づいた研究がなされてきています。そうした研究結果から、「幸せ」になるためのさまざまな提案がされている本です。

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例えば、生活をシンプルにする、という提案。今の社会、やらなければならないことが多すぎて、なんだか時間に追いまくられているような気がするということ、ありませんか? われわれが今いる、この競争社会は成功するチャンスも生みだしますが、競い続けなければ負けてしまうという不安も生みだします。そういう状況の中で、気がつけばいろんなことで焦らされ、走り回されている……。

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でも、シンプルにすればいいと言われても、なかなかすぐにできるものじゃないよねというのがゼミの多数の意見。自分一人だけがシンプルにしたら、自分一人が社会から脱落してしまいそう。でもゼミのみんなで、ああでもないこうでもないと話し合っていると、今の社会にどういう問題があるのかその片鱗を感じ、その社会の一員として自分はどのように生きていくのか、あるいは協働していくことの大切さなどについて、考えを巡らせる機会になっているようです(みんなの話を聞いている私が一番恩恵を受けているかも?)。いよいよこれから社会に出て行くゼミ生たちが、それぞれの人生で「幸せ」を実感できることを願ってやみません。

(松岡 努)

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