22年度卒業生 井戸ゼミの村川里織さん

東日本大震災によって中止になってしまった卒業式を、この度2年越しに開いてくださり、参加出来たことを本当に嬉しく思っています。中止と連絡が入り、卒業証書が郵送で送られ、あまりにあっけない学生生活の終わりは割り切ったつもりでもどこかずっと心残りでした。

社会人になってもう2年。まだまだ未熟ではあるものの、すっかり仕事中心の生活にも慣れ日々を過ごしていましたが、久しぶりの母校は懐かしいというよりまるで学生の頃に戻ったような気分でした。もしかしたらずっと時間が止まったままだったのかもしれません。改めて卒業を迎えることが出来、新たな気持ちでまた頑張ろうとそう思えました。


村川さんは株式会社銀座マギー新宿小田急店に勤務しています。入社間もない頃、日本専門店協会の第15回「あったか・えっせい」(2011)に応募し、応募総数827編の中から、最優秀賞1名、優秀賞2名、檀ふみ賞1名に続く入賞者10名の1人として見事受賞しました。以下にその受賞作品をご紹介致します。

私なりのおもてなし

村川里織

新社会人として働き始めてもうすぐ2ヶ月。毎日の仕事もようやく自分のペースを掴み始め、ひとりで出来ることも少しずつ増えてきました。

そのなかで私にとって最初の大きな壁は、商品をお客様に売り込む、ということでした。先輩方のようにお客様のご希望に合うコーディネートのアドバイスや、上手に言葉を紡ぐことが出来ず、お客様に話しかけてもなかなか買っていただけない日々が続いていたのです。

そんなある日、ニットのアンサンブルをご覧になっていたお客様がいらっしゃったので声を掛けると、白のニットを探しているとのことでした。私はすぐさまストックルームに行き、あるだけの白の商品を全てご紹介したのです。残念ながらお客様のご希望に合う商品がなく、「また来るわね」と言って帰っていかれました。見送った後、私がもっと上手く言えていれば、私ではなく他の先輩方だったら、今ある商品の中でも買っていただけたかもしれない、と少し落ち込んでしまいました。

すると、先ほどのお客様が戻ってきて、今度はカットソーのワゴンをご覧になっています。どうしようかと悩んだのですが、勇気を出してもう一度話しかけると、今度は先ほどよりも話が弾み、世間話を交えながらたくさんご紹介させていただきました。しかし、やはりご希望に合う商品はなかったようで、「ごめんなさいね」とまた帰って行かれたのです。しばらくするとまたお客様が戻ってきてワゴンの中を見ていたので、さすがに3度も話しかけるのはしつこいかなと悩んでいると、目が合ったお客様が今度は自分から私のことを手招きして呼んでくださいました。

私はなんだか嬉しくなってお客様のもとへ行くと「これはどんなのと合わせたらいいのかしら?」と質問されました。今度こそ、と、「この上から羽織るのでしたらこういったものもございます」とあるジャケットをご紹介したのです。そのジャケットはシンプルで合わせやすく、インナーもセットになっているタイプのもので、私が得意としていた数少ない商品のうちのひとつでした。お客様に羽織っていただきながら、ここぞとばかりにいろいろと私なりのコーディネートを提案すると、熱心に聞いてくださったお客様はとても気に入ってくださり、お買い上げいただくことが出来ました。

詳しく伺ってみると、明日出かけるのに着ていく服を探していたとのこと。良い服が見つかったと何度もお礼を言ってくださいました。お見送りの際、私の名札を見て「村川さんというのね」と確認すると、近くの先輩スタッフのもとへ歩み寄り、「村川さんに大変お世話になりました。ハナマルを上げてくださいね」と言ってくださったのです。お客様の背中を見送りながら、私はあたたかな気持ちでいっぱいになりました。拙い私のアドバイスを熱心に聞いてくださり、喜んでくださったお客様。まだまだ先輩方のようにはいかないけれど、私にも私なりのお客様に喜んでいただけるおもてなしの仕方がある。そんなふうに気付けた、私にとって大切な出来事となりました。

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