ゴジラと「飲みニケーション」

野球の松井選手に国民栄誉賞が贈られました。ほんとに、おめでとう!
ところで、彼のニックネーム「ゴジラ」は、日本だけでなく、アメリカでも広く知られています。ニューヨーク・ヤンキースのファンも、ゴジラと聞けば松井選手のことを思い出すのです。

  • 「駒女に出現したゴジラ」富田コラージュ写真
    「駒女に出現したゴジラ」富田コラージュ写真

それにしても、なぜゴジラなのか?

おそらくは、松井選手の怪物的(失礼!)なまでの力強さが、どこか「ゴジラ」のイメージと重なり合うからでしょう。

しかし、もし、アメリカ人が「ゴジラ」の映画を見たこともなく、その話すら聴いたことがなければ、この連想は成り立ちません。私たち日本人と同じように、アメリカ人もまたゴジラのことを知っているから、このニックネームが通用するのです。

「A大学のキャンパスは東京ドーム10個分の広さを誇る」といった表現を理解するためには、聞き手の側にも東京ドームのイメージが共有されている必要があります。このように、私たちがものごとを理解するときに手がかりとして参照される情報やシステム、体験などのことを心理学では「準拠枠」とよんでいます。

話し手と聞き手が「準拠枠」を共有していればいるほど、コミュニケーションはスムーズとなり、ますます相互理解が促進されるのです。

そして、私共、オヤジや爺さんが大好きな「飲みニケーション」には、単に情報を交換したり、悪だくみ?をしたり、といった機能だけではなく、こうした「準拠枠」の共有範囲を拡げるというとても大切な機能があるのです。たしかに、ガード下の焼鳥屋で盛り上っても、大した情報交換はできませんし、組織や効率の論理からすれば無駄以外の何ものでもないように見えますが、実はオジサン達、あのバカ話を通して共通の「準拠枠」を構築しているのです。それは、いざという時に真価を発揮するはずです。

世代を超え、社会階層を越え、広大な「準拠枠」を共有していることが文化的な豊かさを生み出します。……と、まあ、カタい話はこれくらいにして、あなたも爺さんたちの飲みニケーションにつきあいませんか?

  • タレントのあまやゆかさんと飲みニケーション
    タレントのあまやゆかさんと飲みニケーション

(富田 隆)

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