『ねこあつめ♥心理テスト』出しました/富田 隆(心理学)

6月30日、新しい「心理テスト」の本を出しました。『ねこあつめ♥心理テスト』(監修 Hit-Point、主婦の友社、税抜き900円)です。

この本のテーマになっている「ねこあつめ」は、2014年にスタートしたスマートフォン用のゲームソフトで、現在1300万のダウンロードを達成、根強い人気を保っています。ねこのエサや遊び道具を用意して、庭にねこが集まるのを楽しむという、極めてのんびりした「ゆる~い」、それでいて気持ち「ほっこり」するゲームです。
ちなみに、我が家の4人家族全員がこのゲームにはまり、娘も妻も全キャラクターを庭に呼び寄せることに成功しましたが、次々に新しいキャラクターやグッズが登場するので、今なお奮闘?中です。

登場するねこたちのキャラが皆可愛らしく、独特な癒しのオーラを発しているので、「これで、ほっこり系のゆる~い心理ゲームが作れたら嬉しいね」と編集者と話していました。ただ、ゲームのヒットに便乗した書籍の中には、クォリティーの点で、あまり感心できないものもあったので、おそらく、制作会社のヒットポイント様からのご了承をいただくことは無理だろうと予想していました。ところが、思いがけず話が進み、監修までしていただき、ようやく出版にこぎ着けました。

ところで、私がこれまで出した、いわゆる「心理テスト」の本は、今回で何冊目になるのでしょうか? 本だけでなく、雑誌やテレビ、ラジオなど用に作ったものも加えると相当な量になります。
そして、こんな仕事をしているとよく訊かれるのが、「本当に、当たるの?」という質問です。中には、最初から「インチキ」と決めつけて、拒否反応を示す人もいます。

もちろん、こうした「心理テスト」は、病院などで使われる本物の心理テストとは違います。後者の診断に用いるような標準化された心理検査は、妥当性と信頼性を高めるために何千人もの被験者のデータを集め、多変量解析などの統計的手法を駆使して作られたものです。さらに公開後も、常に追跡的な研究が行われています。
つまり、精度の点で、最新鋭のイージス艦とゴムボート程の差があるのです。本物の心理テストに比べれば、私の作る心理テストなんぞは「オモチャ」です。だから私は、個人的にそれらを心理テストとはよばず「心理ゲーム」とよんでいます。

ただ、時に、オモチャが殺人の凶器になるのと同様、心理ゲームにも使い道はあります。
第一に、精度の低いテストも、何種類も組み合わせてやっているうちに、少しずつ精度が上がってきます。ひとつひとつは歪んで曇った鏡でも、その映像を何枚も何種類も併せて処理を繰り返すうちに実像が見えてくるのです。そんな「ゆるい」方法で自己認識を深めるのも、一つの方法です。

第二に、心理ゲームは「コミュニケーション・ツール」になります。「ぜんぜん当たってない」「じゃ、本当はどうなの?」という具合に、ゲームをめぐってコミュニケーションが活性化するのです。しかも、話題となるのは心理的な問題についてですから、普段はちょっと話し辛いようなプライベートな内容です。そんな話題で盛り上がるうちに、お互いがそれまで以上に親密な関係になることが可能なのです。

そんなわけで、頭の硬い権威主義者の皆さんから胡散臭い眼で見られても、私は「心理ゲーム」を作り続けるでしょう。だって、喜んでくれる人がたくさんいるのですから。そして、人間にとって最大の謎の一つは自分自身なのですから。

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