国際文化学科教員による授業紹介リレー No. 8 「ホスピタリティ概論」

観光文化コース 山田 博彰

「和食」が世界無形文化遺産に

昨年秋ユネスコの「世界無形文化遺産」に日本の「和食」が登録されました。食事は私たちにとって単に楽しむだけのものではなく、人間にとって生きていくうえで欠かせないものであり生命を維持し成長させる重要な営みであります。一方で社会生活を快適にまた潤滑に送るために様々なマナーやエチケットの決まりごとがあり、それが長い歴史の中で文化として備わってきているのです。その文化は、世界の各地に食文化として根づいてきておりますが、この日本も世界に誇る和食という独特の食文化を形成してきており、このたび後世に継承すべき文化として認められたのです。

食事のマナーや気配りは

さて、私たちは長い間培われてきた食事の文化をどれほど理解し実践しているか考えてみてください。今小中学生で正しい箸の持ち方、使い方ができない生徒が50%近くになるとの調査結果が出ているそうです。皆さんは正しい箸使いができますか。社会に出てお客様との会食やおもてなしの場での食事マナーはホスピタリティの第一歩であると言えるでしょう。

さらに、接客業を目指す学生にとっては幅広い商品知識を備えることが必要で、食事であれば季節にふさわしい食材や調理法、提供の仕方や使用する食器に至るまで相手を満足させるだけの心配りをしなければなりません。その為にはプロフェッショナルとしての知識、智慧、そして何より人間性を磨くことが肝心となります。

食事を通じてホスピタリティを学ぶ

この科目は、サービス産業の根幹を成すホスピタリティ(おもてなし)の概念を、単なる知識や技能の習得だけでなく、人的な価値を高めることに視点を置いて学ぶ授業です。また、ホスピタリティ産業のなかで最も特徴的なホテル・飲食サービスについて、その提供する商品に対する知識やマネジメント能力を身につけるとともに、飲食に関する文化やマナーにも触れることにより社会生活の中での立ち振る舞いにも役立つことを目指しています。

日本の食文化とそのルーツをたどる

日本の食文化や食事作法は、曹洞宗を開いた道元禅師がその基礎を築いたと言われています。道元禅師は修行道場における食事担当である「典座(てんぞ)」の役割、心構えをまとめた「典座教訓」という書物の中で、特に典座の持つべき心構えとして、「喜心」「老心」「大心」の3つの心を持って食事づくりをしなさいと説いています。「喜心」は何事にも喜んで取り組む姿勢が、「老心」は誰に対しても思いやりの心が、そして「大心」はぶれることのない平常心が大事という意味ですが、私たちも様々なおもてなしの場面で道元禅師の「三心」を大切にして自分を磨いていきましょう。

  • テイスティングの実習
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