【国際日本学科(仮称・設置構想中)】国際日本学科オープンキャンパスが6月16日に開催されました。
ハイライト! 体験授業 『源氏物語』と『ロミオとジュリエット』

講師は現在「イギリス文学」ご担当の松山響子先生。
一方は日本において1008年頃に紫式部を作者として誕生した物語文学、他方はイギリスにおいて1597年頃にシェイクスピアを作者として誕生した戯曲。両作品における恋の詩歌に注目しました。

はじめに「紅葉賀」における光源氏による父桐壺帝の妃・藤壺への禁断の求愛の歌をまず見てみましょう。

もの思ふに たち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや(源氏から藤壺への歌)

【現代語訳】物思いのせいで舞いそうにもない私が、あなたへの思いをこめて袖を振って舞った気持ちを分かっていただけただろうか。(出典:紫式部、柳井滋他校注『源氏物語 一』<新日本古典文学大系19>岩波書店、2005)

から人の 袖ふることは とを(ほ)けれど 立ちゐにつけて あはれとは見き (藤壺から源氏への返歌)

【現代語訳】唐の人が袖を振って舞ったという古事には疎いけれど、あなたの舞の手ぶりにはしみじみと感動しました。(出典:同上)

衣の袖を振るという『万葉集』の大海人皇子・額田王の相聞歌にも見られる求愛のしぐさが歌に詠まれていることが分かります。

次に敵対する貴族の家に生まれた若い男女の恋を語る詩歌に注目してみましょう。

O! she doth teach the torches to burn bright.
It seems she hangs upon the cheek of night
Like a rich jewel in an Ethiop’s ear;(l.v,43-45 Romeoのセリフ・出典The Arden Shakespeare Third Series)

【日本語訳】
ああ、松明に明るく燃えるすべを教えている!
黒人の耳を飾る豪華な宝石のように
夜の頬を飾っている。(出典:ウィリアム・シェイクスピア 松岡和子訳 『ロミオとジュリエット』筑摩書房、1996)

O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo? (ll.ii,33 Julietのセリフ・出典同上)
What’s in a name? that which we call a rose
By any other word would smell as sweet;  (ll.ii,38-39 Julietのセリフ・出典同上)

【日本語訳】
ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?
名前に何があるの? バラと呼ばれる花を
別の名前で呼んでも、甘い香りに変わりはない。(出典:同上)

女性の容姿の美しさを松明の光や豪華な宝石にたとえ、愛しい恋人をバラの香にたとえるなど、比喩を用いた詩的表現が多用されていることが分かります。また実際にセリフを口にすると、各行のリズムの良さに驚かされるでしょう。これらの有名な恋語りのセリフは詩の形式で構成されているので、日本人にとっての和歌と同じように、英国人にとってリズムが心地良く耳に残る恋の詩として知られています。

以上より、『源氏物語』と『ロミオとジュリエット』の共通点を次のようにまとめることができます。第一に歌、詩の形式で古来より伝承されてきた定型表現および比喩表現を多用した恋人同士の言語コミュニケーションが描かれること。第二に現代、古典として取り上げられる過程において、注釈本、教科書、演劇(能、歌舞伎、オペラ、現代劇、2.5次元舞台、映画、TVドラマ)、舞踏(バレエ)、マンガ、アニメ等さまざまなメディアを通じて伝承されてきたこと。
私も文学を伝承する現代人の一人として、両作品を多様なメディアを通して改めて楽しみたいと思いました。

次回(7月7日)のオープンキャンパスでは、世界文学としての『源氏物語』に注目します。講師は浅川真知子先生。アーサー・ウェイリーによる英訳版The Tale of Genjiに描き出された『源氏物語』の世界を一緒に冒険しましょう!

文責:木内 英実

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