【国際日本学科(仮称・設置構想中)】国際日本学科オープンキャンパスが5月26日に開催されました。
ハイライト! 体験授業 “仏教”思想から読み解く『源氏物語』
2024/06/14
講師は現在「仏教文学」ご担当の山本元隆(やまもとげんりゅう)先生。
はかないもの はかない命の象徴である「露」を用いた『源氏物語』第40帖「御法」の中における紫の上と光源氏との贈答歌に注目しました。
おくと見る ほどぞ儚き ともすれば 風に乱るる 萩のうわ露 (紫の上から光源氏への歌)
【現代語訳】庭前の萩は風に折れ返って、葉の上の露がこぼれ落ちるように、わたしの余命は幾ばくもありません。(出典:紫式部、阿部秋生他校注・訳『源氏物語 4』<新編日本古典文学全集23>小学館、1996年11月、505頁)ややもせば 消えをあらそう 露の世に おくれ先立つ ほど経ずもがな (光源氏から紫の上への返歌)
【現代語訳】世は露のようにはかなく、わたしも先立つあなたを追うように消えてなくなりたい。(出典:同上)
現代、科学的に解釈すると「露」は水蒸気が物体の表面に凝縮して水滴となったものですが、「命」=「露」のたとえは 日本古代の『万葉集』やインドの仏教経典『中阿含経』にも登場します。『源氏物語』が成立した平安時代を経て、鎌倉時代の禅僧であった道元も「光陰は矢よりも速やかなり、身命は露よりも脆し」と『正法眼蔵』で、このたとえを用いています。
『源氏物語』に表出された「命」=「露」という思想は、このように伝承されてきました。私たちも限りある「命」を持つものとして「今」を大切にし、「今」結ばれているご縁に感謝して生きたいものです。
次回(6月16日)のオープンキャンパスでは、『源氏物語』の恋の歌(相聞歌)に注目します。講師は松山響子先生。『ロミオとジュリエット』のなかの「うた」と比較します。
文責:木内 英実