道元禅師のことば【第7回】
2025/01/20
万里をゆくものの、一歩も千里のうちなり、千歩も千里のうちなり。
道元禅師『正法眼蔵』「説心説性」より
「オープンエンド」という言葉をご存知でしょうか。我々がなにか人生の大きな課題や問題を追求していくとき、どこまでいっても、その先に新たな課題が見えてきます。つまり一生勉強であり、終わりはない、そういう場合にこの言葉が用いられています。
数学者藤原正彦氏は「20年も解けていない数学の問題を長い時間考えるのが無上の喜び」と語っていますが、ここでおしまいという世界に安住するのではなく、どこまでいっても必ず次があるという果てしなき途上に喜びを見出しています。
禅の修行においても、ここで終わりということがありません。志を立てて目標に向かい一歩一歩進むことは大切なのですが、ゴールに心奪われるならば今の一歩がおろそかになります。万里を歩む人の最初の一歩も千歩目も、そしてゴールへの最後の一歩も、それぞれが大切な一歩です。しかし未来への期待や不安、過去のトラウマにがんじがらめになって今の一歩がおろそかになってはいないでしょうか。
今日生かされているこのかけがいのない命を本当に生ききれているのでしょうか。この道元禅師の言葉は今日を真に生きるオープンエンドな姿勢を示す言葉として受け止めることができるのです。