6月6日はなぜ習い事始めの日?!

昔から6月6日は習い事を始めるのに良い日とされています。現に「楽器の日」、「邦楽の日」、「いけばなの日」などのお稽古の日と正式に定めています。こうしたしきたりの由来はどこから来たものでしょうか?

その答えのひとつに、「稽古始め」のしきたりがあげられます。楽器や舞踊など伝統芸能の「稽古始め」は6歳の6月6日がよいとされ、歌舞伎、能、狂言でも「初稽古(はつげいこ)」と呼んで、その日に稽古を始めるべしとしています。室町時代に能を大成した世阿弥(ぜあみ:1363〜1443)の著『風姿花伝(ふうしかでん)』によりますと、その冒頭に習い事を始めるには数え七歳(つまり満6歳の年のうち)がもっとも良いと説いています。

(意訳)芸能においては、おおよそ七歳をむかえるとき初稽古とするのです。この頃の稽古は、子どもが自然にやり出した中に、生まれ持った美点が見つかるものです。舞いや働き(演者の所作)、また謡(うた)いは、たとえぎこちない動きでも、何気なくやり出したらそれを大切にして、まずはその子の心のままに、やりたいようにやらせてみること。こと細かに、これは良い、これは悪いと教えてはいけません。あまり厳しく注意すると、子どもはやる気を失い、おっくうになって、能そのものが止まってしまうでしょう。
さらに言えば、もっぱら基本動作以外はやらせてはいけません。込み入った物まねは、仮に出来ても教えるべきではないのです。ましてや大舞台の幕開けの能には、立たせてはいけません。子どもにふさわしい場面で、まずは得意な芸をやらせてみるのが良いでしょう。

なかなか教育論としても参考になるような名文です。能の文化をひろく世間に広めたのは中世の武家社会です。江戸時代になると歌舞伎にもこうした考えが反映し、さらに「六歳の六月六日…」という六続きの言い回しが、頻繁に歌舞伎の台詞として言われるようになり、いつの間にか「6歳6ヶ月の6月6日」という日が習い事始めにふさわしいと定着するようになりました。

番外編ですが、「指の形」由来説も紹介しておきましょう。まず、指を使って数を数える時に手の平を開いた状態から指を折って数えていくと、6の数字の時に小指が立つ形になります。「小指が立つ」→「子が立つ」→「子供の独り立ち」という意味で6歳の6月6日になったという説です。子の独り立ちを願う気持ちは古今を問いませんね。

(千葉 公慈)

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