慶應義塾高校が席巻した「エンジョイベースボール」を考える[体育科 芦田]
2024/02/26
昨シーズン(2023年)の学生野球界は、慶應義塾高校が夏の甲子園大会を制し、慶應義塾大学が秋の六大学野球リーグと明治神宮大会を制した。どちらも「エンジョイベースボール」を標榜しているチームである。
夏の甲子園に関する報道では、「エンジョイベースボール」「長髪」「脱坊主」といったようなワードが飛び交っていたのは記憶に新しいことだろう。昨今、高校野球界のしきたりがフォーカスされている中での慶應義塾高校の優勝は、革新的に見た人も多いことだと思う。
しかし、慶應義塾のエンジョイベースボールは最近始まったわけではないという。
慶應義塾高校野球部監督である森林貴彦氏は、より高いレベルで野球ができるよう日頃の練習では厳しい環境で練習をしていて、一昨年の甲子園覇者である仙台育英高校と決勝戦を戦えたのは、練習の成果だと話している。
楽しそうにプレーしている姿の裏には、地道で地味な努力があることを忘れてはいけない。
私の高校時代、常に高いレベルを求めていた野球部監督の練習は緊張感があり、ライバルとの競争や競技力を向上させるために日々試行錯誤していた思い出があるが、辛いと感じた事は無く、それなりに楽しんでいた。公式戦では、理想的な心理状態「ゾーン」に入り、真剣勝負を楽しむ自分がいたと記憶している。また、野球部員の多数は坊主にしていたが強制力はなく、髪が伸びて坊主とは言えない選手もいた。比較的、高校野球のしきたりとは違う環境で過ごしていた。
そういった学生時代を過ごして、現在の私が考える「エンジョイベースボール」とは、飽くなき向上心だと思う。
私が顧問をしている女子硬式野球部の活動は、レクリエーションではなく競技スポーツであり、より高みを目指すチームである。もちろん野球をしていて楽しいという感覚は必要だが、良いプレーができて「嬉しい」「楽しい」といった所だけではなく、「なぜこのようなプレーができたんだろう」、「さらに良いプレーをするには?」といった自分を高めていく問いを投げかけていくことが能力を飛躍させる思考だと思う。そこに競技力を高める楽しさや競い合う醍醐味があり、これこそ「エンジョイベースボール」である。
体育科 芦田