「自尊心」について思うこと[数学科 生嶋]

「自尊心」をカタカナ(?)で言うと「セルフ・リスペクト」、つまり自分自身に敬意を持つことですね。ちょっと似たような使われ方をする言葉だと「プライド」とかもあります。そして自尊心には「良い自尊心」と「悪い自尊心」の二種類があるような気がしています。今回はそんな話をなんとなくしてみたいと思います。

自尊心が低い、弱い人というのは「自分なんてダメだ」と思っている人です。ある恋愛心理学者によると、自尊心の低い女性は素敵な男性に出会っても「自分なんかこんな素敵な相手に相応しくない」と思っているので、無意識の内に相手を遠ざけて、さらにダメ男を引き付けて同じレベルで良かったと安心してしまうそうです。怖いですね!
逆に自尊心が高すぎる、強すぎるのも問題です。私が好きなこんな例え話があります。

あるところに有名な彫刻家(画家バージョンもあり)がいました。彼には才能ある若い弟子がいたのですが、その弟子が自分の作品を何度師匠に見せても「ダメだ」の一言しか返ってきません。そうして何か月もダメ出しをされて悩み抜いた弟子は、ある時師匠に、「どこをどう直せば良いでしょうか?」と尋ねました。すると師匠は、「鼻をもう少し低くしなさい」と言いました。その後弟子が、「先生、言われた通りに直しましたがこれでどうでしょう?」と自分の作品を見せると、師匠は満足げに笑みを浮かべて、「うむ、たいへん良くなった!」と弟子を褒めました。
実はこの話にはオチがあるのですが、皆さんは分かりますか?

本当のところ、弟子は鼻を低くなどしていなかったのです。直したフリをしただけなのでした。では何故彫刻家が満足したのでしょうか?
私はこの話には深い意味があるような気がします。もちろんこれは「悪い自尊心」を戒めるための寓話ですね。自分の自尊心を高めるために他人を批判するなんてみっともないことはやめたいものです。
自分のミスを認めずに絶対に謝らない人や、絶対に他人を褒めない人も、そうすると自分が負けたようで自尊心が傷つくからなんでしょうね。

おまけ話ですが、ある本で読んで、「成る程なあ、そんなこともあるんだ」と感じたことがあります。
救急車ってありますよね。当たり前ですが、救急車が通ると他の車は道を空けて止まります。そのとき救急車の運転手は、「俺のために皆が道を空ける」と快感を覚えるそうです。また、駐車場の誘導係も、「どんな高級車でも俺の指示に従う」と快感を覚えるそうです(もちろん全員ではないでしょうが)。
いかに人間にとって自尊心が重要なのかを示すエピソードではありますが、ちょっと淋しいですよね。
実は先日、卒業生を送り出したばかりなのですが、最後にクラスの生徒にこんなメッセージを送りました。「君たちはもっと自信を持っていいんだよ!君たちは今のままで十分素敵なんだから」と。自尊心は低すぎても高すぎてもいろいろ問題が起こるような気がします。「私ちょっと自尊心低めかも」と自分で思っている位がちょうどいいのかもしれませんね。

数学科 生嶋

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