【特色ある授業の紹介】仏教の授業「道元禅師について」
2024/11/08
高校2年生は道元禅師について学びました。
駒沢学園では、曹洞宗の開祖である道元禅師の教えを学びます。
8歳でお母様を亡くされた後、諸行無常を感じて出家され、比叡山で修行されました。
しかし、「本来本法性、天然自性身」(人は生まれながらにしてすでに清浄で、もともと悟っている)という経典の一説に疑問を抱き、解決のために宋に留学しました。
そこで年老いた典座(料理係)と出会い、対話の中で大変多くの示唆を得たのでした。
道元禅師がこの出来事を著書(『典座教訓』)で記されており、授業ではこの対話について考えました。以下原文を一部紹介します。
座(ぞ)云(いわ)く、六十八歳なり。
山僧云く、如何(いかん)ぞ行者(あんじゃ)人工(にんく)を使はざる。
座 云く、他(た)は是(こ)れ吾にあらず。
山僧云く、老人家(ろうにんけ)、如法(にょほう)なり、
天日(てんじつ)且(か)つ恁(かく)の
ごとく熱し、如何(いかん)ぞ恁地(かくのごとく)にする。
座 云く、更に何(いず)れの時をか待たん。
訳すと、
典座は「68歳です」と答えました。
そこで私(道元禅師)は「どうして見習僧か下働きの人を使わないのですか」と聞くと、
典座は「他人がやったのでは自分がやったことにはなりません」と言いました。
私は「おっしゃるとおりですが、こんなにカンカン照りの暑いときにするのですか」と尋ねました。
すると、典座は「今やらなければいつやるというのですか」と。
この対話から、考えたことを各自論述し、クラスでシェアをしました。
生徒の感想を紹介します。
- 典座の言葉「他は是れ吾にあらず」は、他人の行動や考えに依存せず、自分自身の行動の重要性を強調しています。禅師の問いかけに対し、典座は「今、しなければいつやるのか」という瞬間の重要性を説いていると思いました。
私たちはしばしば未来や他人を意識して行動を先延ばしにしますが、今この瞬間にこそ行動することが大切です。この対話から、自己の責任を理解し、即行動することは重要なのだなーと改めて感じました。(K.S) - 普段の生活の中でついついしなければならない事を後回しにしたり、自ら進んでやろうとせずに人任せにしていたりすることが多い中で、老典座の言葉が今の私にすごく刺さりました。そして今まで自分に甘えてしまっていたことに気づくことができました。(Y.A)
- すぐにやらなきゃいけないことや、近いうちにやらなきゃいけないことを後回しにしてしまうと、自分が死んでしまうとなった時、そのやってなかったことが死んでもずっと後悔することになるので今、自分ができることをしたいと思いました。(Y.T)
- 典座という役職を下に見るようなことはしないで自分が体験して得る、体でわかる(体得)ことが大切であるという言葉が心に響きました。
自分が実際に体験しないとわからない、理解することができない事が世の中多いと思うからです。(N.T)
私たちは、つい「他人に任せちゃえばいいや」と考えますが、人生は他人に変わってもらうことは不可能です。自分は自分を引き受けて生きるしかありません。
また、「今を生きる」ことは当たり前だと思いますが、
実は私たちの思考は過去に引っ張られて後悔したり、未来に不安を抱いたりして「今ここ」にしかない肝心な「一瞬」、本来の自分を見失っているのではないでしょうか。
この一瞬を生きることがいかに大切で、心の安らぎ(平安)をもたらすか、ということを学んでいます。