「あすへの祈念」に寄せて[社会科 M.K.]

先日、社会科倉庫で資料を探していたところ、『駒沢学園70周年記念誌』を見つけました。今から約30年前の学園はどんな様子だったのだろうとページをめくっていたら、本校の卒業生である作家の杉本苑子さんが、平成7年に文化功労者として顕彰された際の紹介文に目が留まりました。

前回の「こまつぶ」では、ビジュアルヒストリーで視聴した作品内に登場する杉本さんの「あすへの祈念」という文章を紹介しました。1964年の東京オリンピック開会式に参加した杉本さんは、1943年の出陣学徒壮行会にも出席されていました。杉本さんが描く両者の強烈なコントラストが印象的で、当時の情景がありありと目に浮かび、複雑な思いが胸をよぎりました。

歴史学では、ある出来事がなぜ起こったのか、そしてそれが現代にどうつながっているのかという「意味付け」を行います。歴史を考察する際、客観的・批判的・論理的な視点に立つことは大前提です。しかし、歴史的事実とともに、当時の人々の喜び、悲しみ、苦しみ、怒りといった感情が存在していたこともまた一つの事実です。こうした人々の心の動きに触れるとき、考察する側の心も激しく揺さぶられます。

しかし、この「心の揺れ」もまた、考察者自身に起こる圧倒的な事実であり、そうした感情も歴史を考察する一つの手がかりになるのではないでしょうか。つまり、感情を無理に抑え込むのではなく、それを冷静に見つめる「もう一つの視点」を持つことが大切なのだと思います。悲しい出来事は悲しく、つらい出来事はつらい。その事実こそが、人々が紡いできた感情の歴史であり、それを客観的な史資料からひも解いていくことこそ、これから私が目指したい歴史学です。

「あすへの祈念」との出会いは偶然であり、本校の卒業生である杉本さんの文章を紹介できたこともまた、思わぬめぐり合わせでした。これまで自分が目にしたこと、耳にしたこと、そして「感じた」ことを手繰り寄せ、これからも誠実に歴史と向き合っていきたいと思います。


  • 終戦直後の記事から、執筆者の心の揺れが垣間見えます。

社会科 M.K.

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