今回は将棋のお話。[社会科 上戸]

「3人の兄たちは頭が悪いから東大に行った。私は頭がいいから将棋の棋士になった。」
そう語ったのは将棋界のレジェンドとも呼ばれる米長邦雄 永世棋聖。

将棋人口は約1500万人と言われ、プロの棋士と呼ばれるのは約170名。毎年最大でも4名だけがプロになれる、という狭き門をくぐったそのわずかな天才たちが81マスに全てをかけて日々競い合っているのが将棋という世界です。

先日、平安時代から続くとされる長い将棋史に深く名を刻む人物が現れました。史上初の八冠を達成し、現役にして歴代最強のとも呼び声の高い藤井聡太。彼もいつか何かの教科書に載る日が来るのかどうか、気になるところです。

さて、今回は教科書には載らなかったとある棋士を紹介したいと思います。

戦後まもなく、GHQは日本人の軍国主義やその国民の思想を取り払おうと、その精神力の根源を探り、さまざまなものに制限をかけようとしました。その時、一種の戦争をテーマにしたものということで将棋にも目をつけられてしまったのです。そして、GHQにとある男が呼び出され、日本の将棋の命運は彼に委ねられることになりました。その男の名は升田幸三。ここから彼とGHQによる壮絶な舌戦が繰り広げられることに……。

GHQの高官は面談の中でこう言いました。「我々が嗜むチェスと違い、将棋では取った駒を自分の持ち駒として使う。これは捕虜虐待である。」と。

これに対して升田はこう答えました。

「チェスでは取った駒を使わないが、これこそ捕虜虐殺である。将棋では捕虜(取った駒)を、官位(角なら角、金なら金)はもとのままで使用する。能力(駒の働き)を尊重して味方として登用する。これこそ真の民主主義である。」と。

GHQの高官がこれを聞いて呆気を取られると、升田は詰めるように続けました。

「そちらが嗜むチェスとやらは王が危なくなると女王まで楯にしてでも逃げようとする。これがあなた方の言うレディファーストなのか?」と。

5歳から飲んでいたというビールをGHQ高官に囲まれる中で堂々と飲みながら数時間喋り続けた結果、GHQ高官は「もう帰っていい」と投了。升田は数時間にわたる舌戦を制したのでした。

やはり棋士って頭がキレるなぁとしみじみ思う、そんなお話でした。


  • 私はいつも「中飛車」で戦います。

社会科 上戸

新着情報:新着投稿一覧へ