8月[社会科 深谷]

これが掲載される頃には、本校は2学期がスタートしている。毎年同じことを感じる気がするのだが、8月に入るまでは1日が長いなアと思っていたが、お盆休みをはさんでのんびりしたと思ったら、あっという間に9月になってしまった。

皆さんは8月というと、どのようなイメージがあるだろうか。夏休みの楽しい雰囲気だろうか。私は、自分の誕生日があるのでウキウキしていることが多く、きらきらと輝く青空にまぶしい白い入道雲、その下で揺れる黄色のひまわり、という何かのジャケ写のような明るいイメージだ。ただ、8月というのはそんなにきらめいたイメージで終わるような月ではないだろう。

8月に入ると、戦争・戦後・原爆といったようなワード、テーマが多くテレビで扱われる。8月6日、8月9日、8月15日。日本にとって決して忘れてはならない日のうちの3日である。皆さんはこれらが何の日かすぐにわかるだろうか。広島に原子爆弾が投下されたのが、6日。長崎に原子爆弾が投下されたのが9日。終戦の宣言が国民になされたのが15日。

毎年、戦争関連のニュース・ドキュメンタリーを観てさまざまな気持ちを抱くが、いつも感じるのは、この戦争の記憶を正しく受け継いでいくことが年々難しくなっているが、そのように記憶が薄まりつつあることに危機感を抱いている人間がそこまで多くないということ(そう感じるということ)。もちろん、あくまでも私の体感なので実際に統計をとったわけでもなんでもない。だが、果たして皆さんの中でそのような番組を見た、新聞記事を読んだという人はどれ位いるだろうか。

戦争にまつわる文学作品は本当に沢山ある。低学年でも読める『ガラスのうさぎ』、沖縄戦の与えた影響をとある家族、少女の目を通して考える『太陽の子』、身体の苦しみだけでなく、同郷の人々をはじめとする、日本人からの差別に苦しむ辛さを知った『黒い雨』等々、枚挙にいとまがない。

最近話題になった、広島市教育委員会が独自に作る教材から削除したという『はだしのゲン』も著名な作品の1つだろう。先日、たまたま『はだしのゲン』を翻訳した人々を扱う番組を観た。その中で、「『はだしのゲン』は、日本がこんな被害を受けてかわいそう、被害者の日本、という事を伝える作品ではなく、戦争というものはこんなにむごいのだ、あの戦争によって沢山の国の人々が苦しんだ、という事を伝える作品」なのだというようなことを仰っていた。だから何か国語にも翻訳して世界中の人々に読んでもらいたい、ということだった。作者の中沢啓治さんは翻訳を快く許し、どんどんやりなさいと声をかけていらしたそうだ。

いまだにアメリカでは、原爆投下は正しいことだった、日本の暴走を止めた素晴らしい行動だったと判断している人が多いらしい。それどころか、日本は被害者面をしていてたちが悪い、と考える人もいるそうだ。歴史は勝者がつくるもの。自国のことを正当化し認識するというのは一般的な感覚だろう。勝敗ではなく、認めるべきことは認めなくてはならない時がきているのではないだろうか。もちろん日本も……。

私も皆さんと同じく実際に戦争体験はなく、身内も戦後すぐの生まれが最年長ということで身近に戦争体験者はいない。戦後78年となり、ご存命の方も少なくなってきている。学校の平和学習でそういったお話を伺えるのもいつまで続くだろうか。今年、高校2年生は修学旅行で沖縄に行ける見込みだ。ぜひともしっかりとお話を伺い、自分の中で大切に残してほしい。

ウクライナとロシアの戦争も、あと半年で3年目に突入してしまう。平和は決して当たり前ではないことを実感する。長々と書いてしまったが、日本は関係ない、過去のことなんてどうでも良い、考えても仕方ない、とは思わずに、皆が安心して楽しくキラキラした夏を迎えられたことを当たり前と思わないで、どうかこれからのこと、平和のことを考えて欲しいと思う。

爽やかな青空が78年前にも広がっていたのだろうか。

社会科 深谷

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