藤森さんと生徒との対談
「母校から学生を迎え入れる立場となって」

駒沢学園を卒業後、青山学院大学・大学院進学、留学などさまざまなキャリアを経て東京農業大学国際食糧情報学部の准教授となった藤森さん。今回は、母校の駒女から学生を迎える立場となり、実際に進学する生徒とオンライン対談をしました。

卒業生から在校生への質問
「これまでの高校生活とこれからの大学生活に向けて」

藤森さん:まずは、Sさん合格おめでとうございます。いま卒業を目前に控え、きっと新しい環境や学びへ向けて期待にむねを膨らませているところだと思います。どんな大学生活を送りたいですか?

Sさん:実はイメージがまだつかめないでいます。中高は制服を着て、クラスメイトと過ごすというイメージですが、高校から大学となると、もっといろんな人と関わりを持ったりするでしょうし、サークルってどんなところだろうなど、興味もありますが知らないことも多くて不安もあります。
将来の夢を、大学生活を通してはっきりさせたいと思うのですが、これが曖昧なまま学生生活をずっと送ることにならないかという点も不安です。

藤森さん:私も高校生のときそうでしたので、お気持ちがよく分かります。本学に入学する多くの学生さんも、入学時には将来のことがまだはっきりしておらず、4年間の学生生活を通して手探りで見つけていくと思われますので、特段心配することはないと思います。
一方で、東京農業大学のどんな点に興味を惹かれて本学を選びましたか?

  • 東京農業大学准教授 藤森さん

Sさん:「食」に興味がありこれに関する職業につきたいと思っています。特に、食品ロスに関して以前から関心があります。日本は食品を廃棄する国の中で上位に位置していて、このことに関する政策を考えたいと思っているんです。そんな矢先に東京農業大学のオープンキャンパスに行ったところ、そのことに関する説明があったりして、それを知ってからは東京農業大学一本でした。

藤森さん:オープンキャンパスにも参加してくれたのですね。本学は共学で、女子校とはまた違った雰囲気があったと思います。高校では生徒会をやられていたと聞きました。どんな苦労がありましたか?大学生活のどんなところに活かしていきたいですか?

Sさん:行事を仕切ることがおおかったです。コロナ禍でできない行事もあるなか、今までにない形の行事を考えて仕切らなくてはいけないのが大変でした。あとは、駒女の学校説明会で司会進行を務めたりしました。その際に、言葉を吟味したり、どうやったら学校の魅力をより伝えられるのかを考えるのが難しくって苦労をしました。大学では、発表の機会があれば、この経験を生かして積極的に人前で話すことをしていきたいです。

藤森さん:本学の特徴として、全員1年生からゼミナールに参加してもらうので、1年生から毎日発表があります。ゼミナールの中でゼミ長などの役割を担うこともあるでしょう。2年生からは一部、研究室に所属してもらい、自分たちのやりたいことを教員と話し合いながら進めていきます。また、本学の生徒会のような組織である農経会では、高校生向けのオープンキャンパスで活動報告をしているので、生徒会での経験が活きてくると思いますよ。

在校生から卒業生への質問
「駒女生時代の藤森さん」

Sさん:はい、では今度は私から質問です。藤森さんはどんな駒女生でしたか?

藤森さん:逆に、どんな生徒だったように見えますか?(笑)

Sさん:えー(笑)今お話しした感覚では、きっとおしとやかで大らかな方だなと思いました。

藤森さん:気を遣わせてしまいましたが(笑)、ある意味?その通りで、私は静かで目立たない生徒でした。卒業してから恩師にもそう言われました。部活動で賞をとったり、Sさんのように生徒会で活躍するということもありませんでした。

Sさん:そうなのですね。部活とかは何かやられていたのですか?

藤森さん:今あるかは分からないですが、スケート部に入っていました。ローラーブレードが当時はやっていて、週に2、3回の練習がありました。

Sさん:スケート部があったなんて知りませんでした。あと、先生の経歴で、留学されたと聞きましたが、どんな体験をされましたか?またその後の生活になにか変化はありましたか?

藤森さん:留学はかなり計画的に実行しまた。
留学をした直接の理由は、必要に迫られていたからです。当時、大学院進学を考えていて、授業のほとんどが英語で行われていました。ライティングやリーディング、リスニングはもちろん、スピーキングや英語でのプレゼンテ―ションも必要で、むしろスキルが無いとついていけない状況が目に見えたので、留学をしました。
もちろん、駒沢学園在学中に、オーストラリアへの研修旅行で芽生えた、漠然とした「海外に行きたいな」という気持ちや、現地の高校を訪問した際に感じとった多様性への興味が、根底にはありました。
留学経験は、その後の生活におおきな変化をもたらしました。おとなしくて目立たないタイプでしたが、言語で相手に意思を伝える楽しさを学び、社交的になりました。また、研究の幅も広がり、分野を超えたアクセスが容易になりました。

Sさん:私自身英語が苦手なのですが、今の時代世界中の人とつながることができるし、コロナが終わったら海外にも旅行行きたくて、そのときの英語ができると余裕を持てると思うので、英語の勉強は大事だなと思います。
話は変わるのですが、先生はどうして東京農業大学の先生になられたのですか?

藤森さん:大学教員を目指したのは、就職してから大学に入りなおした経験に基づいています。教員になってからは、自分の専門を活かして、いくつかの大学に所属しました。大学教員は、専門の分野・高度な知識をもって、比較的自由に職場を選ぶことができます。今でいうところの、ジョブ型雇用のようなものでしょうか。前職は政府機関で研究員をしており、コロナになる前は国際機関で働く話もあったのですが、そういうわけにもいかなくなり、国内でそれと同等の研究が続けられる東京農業大学国際食糧情報学部を選びました。

  • 東京農業大学准教授 藤森さん

激動のコロナ禍を通して
「これからの受験生に伝えたいこと」

Sさん:私の場合、高校生活の3分の2以上がコロナで学校生活に影響が出てしまいました。一番は、行事がほとんど潰れてしまったことです。高校2年生が一番楽しいものなのに、その時期にあるのはテストだけという生活だったのですが、そのかわり勉強ははかどったんです。オンラインなので登下校の時間が短縮されて勉強時間が増えたかなと思います。そのおかげもあって結構成績が上がりました。一方でやっぱり、友達と話してストレスを発散したいから、その面ではちょっと嫌かな、というのは正直ありました。

藤森さん:私も東京農業大学に着任して4日目頃から在宅勤務になりました。初年度は出勤したのが数えるくらいで、それこそ一度も直接お会いしたことのない学生さんとこうして画面越しに話をしていくことになりました。そういう意味ではこれまで経験したことのない、コミュニケーションの取り方でしたね。
一方で、Sさんも実感されていたように、実はオンラインになってからの方が全体的に学生の成績が上がっています。1対1で指導をする時間が長くなり学生の満足度も上がっているようですね。特に私が持っている講義科目は、リアルタイムではなくオンデマンドになりました。学生さんは、自分の好きな時間に自分の端末を使って学習し、わからないところは繰り返し復習するようになりました。また、学生個人のスピードと学習能力に合わせて学習できるということは、新しい生活様式の利点ですね。今後は対面授業に加えてオンデマンド授業も継続され、他の世代と比較すると、皆さんの世代にはむしろ有利ですので、がんばってください。

Sさん:駒女ではオンラインでも時間割通りに進められていましたが、大学ではその辺は学生の自主性に任せているのですね。

藤森さん:そうですね。高校生の時はある程度先生方や親御さんがサポートしてくださった部分が大きいと思いますが、大学生になると、自分のマネージメント能力をすごく求められることになります。オンデマンド形式にしている理由としては、特に私の講義は従来の講義とまた違って反転授業を採用しています。反転授業というのは学生が事前に予習をしてみて分からなかった内容を講義の時間内に先生に質問をする、また、応用問題を解くという講義のやり方ですね。そうするとわからないところをその場ですぐに先生に教えてもらえるので学生の満足度が高いですし、そもそも予習をしないで授業に出てもあまり手ごたえを感じないのか、学生が自主的にマネージするようになります。反転授業は日本でもだいぶ採用されるようになりましたね。

Sさん:そういう授業方法があるのですね。知れて勉強になります。

藤森さん:ありがとうございました。Sさん、4月にお会いできるのを楽しみにしています。

Sさん:授業でまたよろしくお願いします。