名画[社会科 栗山]

本校には「ビジュアルヒストリ―」という授業があります。この授業では、「視覚にうったえる」資料から歴史を考察していきます。例えば、映画やドキュメンタリー作品を鑑賞して、時代背景を読み取ったり、古い建造物から歴史を紐解いたり……。題材に事欠くことはありません。そこで今回のこまつぶでは、「ビジュアルヒストリ―番外編」と題して、ある絵画から歴史を考察してみたいと思います。

  • 動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり より  府中市美術館 2021年(ポストカードの写真) ※作品は個人蔵(下関市立歴史博物館寄託)
    動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり より
    府中市美術館 2021年(ポストカードの写真)
     ※作品は個人蔵(下関市立歴史博物館寄託)

これは「木兎図」という作品です。私自身、この作品を初めて見たとき、一体誰が、いつ、どのような目的で描いたのか、見当もつきませんでした。しかし、この作品が美術館に特別に展示されるということは、何かあるにちがいない……。
作者は江戸幕府三代将軍、徳川家光です。家光といえば、江戸幕府の初期において、幕政の土台を固めた人物です。あの家光がこの絵を描いたとは、にわかには信じられません。しかし、なぜだか目を離すこともできないし、見れば見るほど気になってしまいます。そして、○○派の影響を受けた作品だとか、技巧がどうこうだとか、難しいことを訴えてきません。シンプルに「なんかいいな」と思わせる力があります(実際は、将軍家光のまわりには御用絵師がいましたので、一流の作品が身近にあったはずです)。家光はどのような気持ちでこの絵を描き、側近たちはこの絵にどのような反応をしたのだろう、と想像してしまいます。
ビジュアルヒストリ―の授業では、いろいろな作品を鑑賞しながら歴史の読み取りに重点を置いています。しかし、案外ゆったりとした気持ちで、素直に「いいな」と感じる作品から歴史を考えていくのもおもしろいかもしれません。

社会科 栗山

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