<校長室ブログ>若いみなさんへ

生きていれば、困難に出くわす、そんな経験を乗り越えて年を重ねてきました。12歳で経験したあの出来事は、今考えればちっぽけなことだけれど、今も私の心を大きく占めています。

人生で最初の挫折は、小学校6年生。担任の先生とうまくいかずに、円形脱毛症、つまり頭がはげてしまった、あの時だったと思います。
小学校4年、5年から引き続いて担任になった先生が、初めは大好きで、放課後残って先生のお手伝いをしたり、先生が住んでいらした狛江のマンションの自宅に遊びに行かせてもらったこともありました。その時に撮った写真は、先生や友達と楽しそうにうつっています。
そんな気持ちが、いつごろから変化したのか、今となってはよく思い出せませんが、しだいに、先生のことが苦手になり、反抗するようになりました。そして、そんな生徒であったので、先生も私に厳しくあたるようになりました。(実際はそうでなかったのでしょうが、当時の私はそのように感じていたのです。)
先生とはどうしてもうまくいかなくなり、心を閉ざしてしまいました。先生の前にでると、ドキドキするのです。ストレスがかかって私の髪の毛は少しずつ抜け落ちていきました。
円形脱毛症になった私を、先生はすごく心配してくださいました。でも、優しく接してくれればくれるほど、私の緊張の糸はピーンと張りつめ、そうした状況は、結局1年間、小学校を卒業するまで続きました。
子どもとは言え、乙女ですから、気にしていないふりをしながら、心の片隅で、はげている自分が人にどう見られているのかと、いつも気にしている辛い日々でした。

人とのかかわりで、人はストレスを感じます。辛いことや、悲しいと感じることも、自分と他人との関係で起こることが多いものです。
でもその時に、悲しみから救い出してくれるのは、「時間」と「人」の力です。あの時、私が普通に学校に行けたのは、友達が、髪の毛のことには触れずとも、なんとなく温かく接してくれていることを感じ、髪の毛なんて関係なくあなたのこと好きよ、と言われているような気がしていたからです。一緒に笑って楽しんで、普通に遊んでくれた友達が、どんなにかありがたかったことか…。
母は、毎日私のハゲが少しでも隠れるようにと、髪の毛を結わいて、「なかなか隠せないわね」と明るく笑いながら学校に送り出してくれました。ありがたいな、と思います。(なぜカツラという発想がなかったのだろう、と思いますが…)

私の髪の毛がすくすくと生えてきたのは、小学校を卒業してすぐ、あっという間でした。でも、中学校の新しい制服姿で小学校を訪ね、久しぶりに先生と会った時、また心臓がばくばくとしたことは衝撃でした。人の心が、どれほど、体に影響を与えているのか、恐ろしくなって、すぐその場を離れました。

人生で最初の私の挫折は、こうして周囲の人の優しさと、時間のおかげで終焉を迎えたのでした。今、当時の担任の先生には感謝をしています。この経験が今の私につながっているのです。
人と人との関係は、難しいですね。合わない人と上手に関係を築いていくことの大切さを感じます。
当時の友達にも感謝をしています。今もずっと仲良しです。
人は、人との関係で傷つき、人によって救われる、これが私の最初の挫折から導きだした結論です。

自分が教職についた今、教師という立場が生徒に与える影響の大きさを、忘れてはいけないと思っています。
みんないろんな思いや悩みを抱えていて、それに強弱・大小はつけられません。悩んでいること、抱えている気持ちにそっと寄り添い、応援をしてあげたい。あなたを大切に思っていますよ、という気持ちは必ず伝わると信じて。私たちはそういう人の支えが力となり、困難を乗り越えることができると知っているので。

そして最後に、挫折したすべての経験がのちの人生に生きてくるのだと、若いみなさんにお伝えしたいと思います。