駒沢女子大学 駒沢女子短期大学

  1. ホームの中の
  2. 空間造形学科の中の
  3. 空間造形の窓の中の
  4. リビングデザインカフェ

空間造形の窓

学科TOPに戻る

リビングデザインカフェ

リビングデザインカフェは、わたしたち学科の教員がそれぞれの専門領域での活動や、日々の生活の中で感じたり考えたりしたこと、リビングデザインにまつわる話題やエピソードなどを自由に書き込むページです。コーヒーでも飲みながらゆっくり読んで戴ける話題を提供できればと考えています。是非ご意見ご感想をお聞かせください。

助手という特等席から─④
卒業研究作品、制作快調!

(堀辺 阿伊子)

あっという間に秋が過ぎ去り、気がつけば寒さが身にしみる季節になりました。空間造形学科で冬の到来、といえば4年生の卒業研究が佳境に入ったことを意味します。今年度の卒業研究は作品のジャンルが多岐に渡り、傍らで見ていても大変面白いです。

集合住宅の設計、新しい町並みの提案、古民家のインテリア計画、木工による椅子の制作、陶器の照明、和紙を使ったオブジェ、織機で織る大型のタペストリー、などなど・・。
皆の様子をほんの少しご紹介しましょう。

浅草から東京スカイツリーへ向かう川沿いに、新しい町並みを提案しているHさん。何度も敷地調査を重ね、時間をかけて先生とエスキースをしてもなかなか方向性が定まりません。毎日難しい顔をして大学に通い、やっとの思いでプランが決定。ただいま図面や模型と格闘中です。福島県出身のKさんは、故郷の野菜を使ったオブジェを制作中。トマトや小松菜などの野菜をミキサーにかけて混ぜ込んだ和紙を沢山制作しました。それらの和紙が生きるように、最後の仕上げに奮闘中です。馬ではなく、現実には乗ることの出来ない熊を乗りこなそう!というコンセプトをもとに、熊のかたちをした受動歩行玩具を木工で制作しているTさん。塗装を終えたばかりの「mokuma」は、実際に子供達に使ってもらうために一時大学外に出張中です。

卒業研究に取り組んでいる全員が、それぞれの思いをこめて、時間をかけて、作業しています。とても仲良しの皆は、励ましあってやる気を高め、よりいっそう絆を深めています。提出まで残りわずか。成果が今から楽しみです。みんな頑張れ!!!

※卒業制作展を開催します。卒業研究の成果を是非ご覧下さい!

◎ 空間造形展2011(学内展)
会期
2011年12月20日(火)~25日(日)
時間
10:00~17:00
会場
実験実習館 4-100、4-200
◎ 卒業制作展2012 (学外展)
会期
2012年3月7日(水)~3月11日(日)
時間
11:00~19:00
会場
BankART1929
住所
〒231−0002   横浜市中区海岸通3-9
TEL
045-663-2812
交通
横浜みなとみらい線「馬車道駅」6番・赤レンガ倉庫口徒歩4分
※神奈川県警本部左隣り

 

 

岩手県岩泉町の仮設住宅で『どこでもカフェ』

(三戸 美代子)

UIFA JAPON(世界女性建築家会議日本支部)は、東日本大震災に対して様々なアプローチをしていますが、その一つに『どこでもカフェ』があります。これは、岩手県岩泉町の仮設住宅にお住まいの方に、暖かいお茶とゆっくりできる時間を提供しようという試みです。その2回目となる11月6日のメンバーとして、一泊だけの短い時間ですが岩手を訪れてきました。

盛岡から岩泉町へ向かう山間部は、雄大でどこか懐かしい風景が続き、2時間以上の長旅も飽きさせない美しい場所でした。それだけに、沿岸部の被災地区との対比が怖いものに思え、今現在、東京で普通に暮らせていることとのギャップを痛感します。覚悟していたとはいえ、被害状況は頭で理解できる範囲を超えています。ただ、とにかく自分の目で見たということが今後、少しずつ私の核に影響していくことだろうし、そうでなくてはならないという気持ちを強くしました。

ガードレールをへし曲げた津波の勢い(小本地区)
ガードレールをへし曲げた津波の勢い
(小本地区)
要塞のようなスーパー防潮堤も根元から倒れてしまった(田老地区)
要塞のようなスーパー防潮堤も根元から倒れてしまった(田老地区)
集会室も秋の野の花を飾って華やかに 集会室も秋の野の花を飾って華やかに

さて、残念ながらカフェ当日は寒い雨でした。それでも、プレハブの仮設住宅の集会室の設え(しつらえ)を持ち寄ったもので整え、野の花を飾ると、まさしくそこは『カフェ』でした(私は力仕事担当でしたが…)。住民の方が入口で「わぁっ!」と声を上げてくださるのを聞くと、工夫次第で場の雰囲気を変える力を実感します。

一番人気の抹茶 一番人気の抹茶
(手作り菓子付き)

また、席に着く時はなんとなくぎこちなかった方も、同席した方と長く話し込んだり、小さなお子さんを愛でたりと、和やかになっておられました。当事者でなく他者が関わることで、少し日常から離れた時間を持ってもらえたのではないでしょうか。

雨にもかかわらず衣料提供も盛況
雨にもかかわらず衣料提供も盛況

ところで今回驚いたのは、衣類提供(主に古着)が好評だったことです。通常、衣類は支援物資として敬遠されると言われますが、持参した品を直接顔を合わせてお分けできたので、安心して貰っていただけたようです。被災地の支援と一口に言っても、さまざまな要望に対応するのは本当に難しいです。でもだからこそ、女性ならではの細やかな点に配慮し、継続していくことが大切だと思います。

私に何ができるのか、お役に立てるのか、不安を抱えての出発でしたが、こちらが暖をいただけたようなほっこりした気持ちで帰途につきました。
(写真協力 : 岩泉町役場 有原隼人氏)

 

 

空間造形学科 2011年度フィールドワークレポート
京都リビングデザイン今昔
─ 2つの離宮と伝統文化を体験する旅 ─

(佐藤 勉)

日本の伝統文化が今も街中に生き続ける京都。修学旅行でかつて訪れた京都とは一味違う、京都文化の本質に迫る旅。9月13日から16日の3泊4日で、京都市内の各所を巡ってきました。桂離宮と修学院離宮を中心に、伝統的織物から陶芸絵付け体験まで、太古から現在まで息づく等身大のリビングデザインを丸ごと体験し、建築・インテリアデザインに対する新しい視点を発見することが今年のフィールドワークの目的です。


1日目 織物工場見学と染色実習

京都市北部の西加茂にある川島織物セルコン工場は、創業1843年(天保14年)、1910年(明治43年)に室内装飾(インテリア)の分野に進出し、明治、昭和の宮殿の内装を手掛けるなどしている名門の繊維会社です。

織物工場見学
織物工場見学

染色工場、織物工場の順に、糸を染める工程、細やかに色を調合する技術者、手織りの緞帳制作から巨大な機織機械による織物製造過程など、説明を受けながら見て回ります。続いて工場に併設する織物文化館を見学。精緻で優美な帯や美術工芸織物、さらに日本で最初に室内装飾織物を手掛けた資料など、織物文化の歴史を知ることができます。

夕方からは川島テキスタイルスクール工房にて染色実習。3つの原色:赤・黄・青の染料を0.01g単位まで正確に測り、微妙な色合いを調合して毛糸に染色する「混色図」の制作を行いました。みんなで合計20色を染め上げ、全員に分配して2時間の実習が終了。隣接する川島テキスタイルスクールの寮に宿泊しました。

(写真A)織物工場見学  (写真B)染め上った20色の毛糸
(写真C)翌朝スクール前で記念写真

  • 染料の量が少し変わるとまったく違う色になるのは驚きでした。立体織の授業を履修していたので、さらに興味を持ちました。(2年 伊藤)

 

2日目 修学院離宮と桂離宮見学

今日はフィールドワークのハイライト、2つの離宮を一日で巡ります。共に事前に許可を得た18歳以上の者でないと入場できません。まず比叡山のふもとにある修学院離宮へ。17世紀中頃に後水尾上皇の指示で造営され、上・中・下の3つの離宮からなり、借景の手法を採り入れた庭園として、我が国を代表するものです。広大な庭園と建物は、王朝文化の美意識の到達点と位置づけられています。建物の所々に細やかなデザインを発見しながら、1時間半ほどかけて園内を歩きました。

(写真D)修学院中離宮客殿
(写真E)中離宮客殿欄干(らんかん)のデザイン
(写真F)修学院離宮隣雲亭から浴龍池を臨む
(写真G)隣雲亭の「一二三(ひふみ)石」

  • 水の流れる音と、緑の調和に感動しました。これからは昔ながらの日本のデザインにもっと目を向けていきたいです。(2年 坂田)

 

午後は西京区桂川ほとりの桂離宮を見学。17世紀の初めから中頃までに八条宮初代智仁親王と二代智忠親王によって造営され、日本庭園として最高の名園といわれています。大胆な市松模様の壁面や、特定の日に水盤に月を映して見る仕掛けなど、現代でも十分通用するデザインがあふれていました。

(写真H)桂離宮賞花亭から庭園を見る
(写真I)桂離宮書院 (写真J)松琴亭のインテリア

  • 3つの茶室前にある敷石も、それぞれ違う石で『真』『行』『草』にデザインするなど、茶室の意味にあったつくりでした。(2年 西田)

左から「真」「行」「草」の敷石デザイン

 

3日目 陶芸絵付け実習、西本願寺、角屋もてなしの文化美術館見学

清水寺近くの陶芸工房「東哉」で、陶芸絵付け体験実習を特別に行っていただきました。素焼きの平皿か湯呑に鉄か呉須(ごす)で自由に絵付けします。各学生ともに個性的な作品が仕上りました。焼きあがった器は後日届けられるので楽しみです。実習の前後に清水坂・三寧坂界隈を散策しました。

(写真K)陶芸絵付け実習 (写真L)絵付け作品の完成

  • 東哉さんは『商品を買ってもらう』ためのお店ではなく、『お客さんをもてなす』ためのような、お店とは思えないお店。そこに居続けたくなる雰囲気を醸し出していました。(2年 伏見)

 

昼食後は市バスで西本願寺へ。国宝の飛雲閣、唐門、阿弥陀堂を見学しました。

最後に重要文化財の揚屋(料亭)「角屋もてなしの文化美術館」へ。通常公開されていない2階の座敷を学芸員の説明を聞きながら見学。精緻な文様と細やかな工夫にあふれたインテリアデザインに多くの学生が魅了され、この旅で一番の収穫となりました。

(写真M,N)角屋もてなしの文化美術館見学

  • 写真には残すことができませんでしたが、しっかりと目に焼き付いています。(2階は写真撮影禁止のため、お見せできないのが残念です。)(2年 伊藤)
  • どの間も細やかなおもてなしの心が、きらびやかな装飾、遊び心、こだわりの技術に表れていて、きっと接客に対しても細やかなおもてなしの心が表れていたのだろうと予想できる内装でした。(3年 町田)
  • 旅行中一番気に入った場所は角谷の『青貝の間』です。違う形の窓が並べられているアンバランスさ、普通であれば不自然に見えるはずが1つの部屋として完成されている点が素晴らしいと思いました。(2年 北村)

 

夜は鴨川沿いの料亭で川床料理を体験。舞妓さんの踊りが披露されました。質問コーナーなどで盛り上がった後、全員で記念撮影。フィールドワーク最後の夜に相応しい、華やかなひと時を過ごしました。

(写真O)舞妓さんお座敷体験 (写真P)舞妓さんと一緒に記念撮影!

  • 本物の舞妓さんの舞を間近で鑑賞できるというすごい体験をしたことを、帰ってきた後からしみじみと感じました。(2年 土田)

 

4日目 竜安寺、仁和寺見学

世界遺産・龍安寺。白砂を敷き詰めた中に大小15個の石を配置しただけの枯山水庭園。どこから庭を眺めても、必ず一個は他の石に隠れて見えないように設計されています。写真撮影は問題ないがスケッチは禁止とのことで、少し残念でした。徒歩で世界遺産・仁和寺へ。境内を散策し、金堂前で記念撮影。学生はおみくじをひいた後、御殿の建物と庭を巡ります。午後は市中に戻り、自由行動。一部学生と旅館近くの京都デザインハウス(安藤忠雄設計)など新しい京都の空間デザインを見学しました。

(写真Q)竜安寺石庭へ向かう階段で (写真R)世界遺産龍安寺石庭
(写真S)仁和寺金堂前にて (写真T)京都デザインハウス


● 感想

染色実習や陶芸絵付け体験は、実際の制作が行われる工房や工場を併せて体験することで、普段の学びとその延長上にある現場とのつながりを体感する貴重な経験となりました。一度に4人ずつしか入場できない2つの離宮見学は、通常だと団体行動に組むことは難しいのですが、同日の見学で2つの離宮の空間の特徴を等身大で比較することができました。学生にとっては今後の課題や制作に対するとても良い刺激となったことでしょう。

  • あえて修学旅行コースをはずし、あまり見学できない建造物を見ることができて良かったです。舞妓さんとのふれあいも良い思い出となりました。(2年 阿久津)
  • 日本庭園は専門外かと思い、興味がなかったのですが、さまざまな庭園を見る機会が4日間の中であって、見れば見るほど深いものだと感じました。(2年 石井)
  • これからは使いやすい・丈夫ということの他に、季節を楽しむ手助けをすることも考えに入れながら、デザインしていきたいと思いました。(2年 徳江)
  • 今まで何度も京都に足を運んだことがあるのに、知らなかった京都を発見できました。疲れたけれども、それを上回るくらいの収穫がありました。(2年 伏見)

 

 

 

「ロッジポールパイン」って知っていますか?

(榎本 文夫)

後期の授業開始直前に、遅い夏休みを取ってカナダの大自然を駆け足で触れてきました。そこでガイドの方からカナダの森についてちょっと興味深い話を聞いたのでみなさんにもお披露目したいと思います。

ティピー:インディアンの住居
Wikipediaより:
http://ja.wikipedia.org/wiki/ティピー
外部リンク

みなさんは「ロッジポールパイン」という木を知っていますか?北米大陸のロッキー山脈を中心にアラスカからカリフォルニア周辺まで広く太平洋側に分布していて、日本のアカマツなどと同じ二葉松の仲間だそうです。
名前の由来は、読んで字の如く「ロッジ=小屋」の「ポール=柱」として使った「パイン=松」という意味で、先住民族であるインディアンたちの住まいであるティピー(Tipi, teepee)を建てるときの柱として使ったのでこの名前が付いたそうです。本当にポールのように細長く真っ直ぐに伸びる松です。


ロッジポールパインの森
同じ大きさの木の森が延々と続く。高速道路との境に野生動物が道路に出てこないためのフェンスがある。

写真はカナダバンフ国立公園内の「ロッジポールパイン」の森です。どの木もみな大きさが揃っているのはなぜでしょうか?私は、最初植林された森なのでどの木もサイズが揃っているのだと思っていました。しかし、この森は、現在世界自然遺産の指定も受けているカナダで最初にできた国立公園内にあり、一切人の手が入っていない自然林だそうです。この木は、山火事の後に一斉に生えてくるそうで、この周辺の森は130年前の大山火事の後芽生えてできました。

では、なぜ山火事の後に芽生えるのでしょうか?この松の種子いわゆる “まつぼっくり” は、通常の状態では、パイナップルのような状態で笠が閉じていて中の種は飛ぶことがありません。山火事がおきて周囲の温度が42度以上になるとその熱で種子を覆うロウの様な成分が溶けて笠が開き、そして中の種がでて発芽できる様になるそうです。そのため山火事の後に一斉に芽生え、そして育ってきたので、まさに植林したようにみな同じ大きさの木が並んでいるのだそうです。

アニマルオーバーパス
野生動物が高速道路で分断された森を行き来するための歩道橋。臭いが付くと動物が利用しなくなるので人の使用は厳禁。

また、この「ロッジポールパイン」は寿命が200年くらいなので、再び山火事が起こらない限り、あと7〜80年するとこの森は自然に森林更新を迎え、その後にはモミやトウヒなどの森になるそうです。
ちなみに現在カナダでは、森が古くなると病害虫などが増えて森全体の生態系が崩れるので、自然と野生動物を守るために計画的に山火事を起こすそうです。

これから紅葉も始まり森の散策には一番いい季節です。みなさんも森を歩いてみませんか。


今回の旅のベストショット
「ボウレイク」の名前の由来は、インディアンが弓を作るのに使ったヤナギの木が、湖の周辺にたくさん生えていたからだそう。

 

 

しましまデザインの不思議

(茂木 弥生子)

先月行われた「プレゼンフェスタ」の時、3年生の学生たちは仲良くボーダー柄で揃えてやってきました。仲の良さも、結束力も抜群ですね!ボーダーズと名付けます。


3年生ボーダーズ!ボーダーの着こなし方に個性が光ります。

その様子を見て、ふと「横縞模様はボーダーと呼ぶけれども、縦縞模様の呼び方はあるのかな?」という疑問が湧きました。調べてみたところ、ファッションでは縦縞模様をストライプ、横縞模様をボーダーと使い分けることもあるようですが、縞=ストライプという意味なので、縦でも横でも「しましま柄」はストライプとなります。また、ボーダー(Border)は本来、境界や縁という意味なので、横縞という意味ではありません。では、なぜ横縞模様のことをボーダーと呼ぶのでしょうか?そもそもボーダー柄とは、洋服の裾や袖口などを強調するように縁取った模様を指すのですが、横縞はその模様が繰り返してできる柄であることからボーダーと呼ばれるようになったようです。ちなみに、ボーダーと同様に縦縞模様独自の呼び方はないようです。

ところで、縞模様はファッションに限ったものではなく、例えば幕にも使われ、色の組み合わせで紅白であれば慶事、白黒であれば弔事、黒、柿色、萌黄色の3色であれば歌舞伎などと、色の組み合わせを見るだけで、その意味合いが伝わったりします。


シマウマボーダーズ!
しましまは絆の印!?

また、動物にも縞模様は多く見られます。縞模様の代表的な動物といえばシマウマ。シマウマは、縦縞か横縞かご存知ですか?正解は横縞。白黒ボーダー柄ということになります。脊椎動物の場合、頭を上にした状態での縞模様をみるそうです。では、シマウマにはなぜ横縞があるのでしょうか?この疑問についてはさまざまな説があり、真相は明確になっていないそうなのですが、その中にとても興味を引く説がありました。それは「視覚的な絆の役目をもつ」というもの。シマウマ同士がお互いを認知し、群れのメンバーとしての意識を生みだしているというのです。この説が正しいとすると、最初にご紹介した3年生のボーダーズとシマウマの本能は近いものがあるのでしょうか?なんとも不思議な自然界のつながりを感じてしまいました。

 

 

小さな家の耐震補強

(神村 真由美)

「スクラップ&ビルド」と言われ、平均してたった26年で建て替えられる日本の住宅の流れとこれまで無縁の我が家は、私達の入居時から既に古く、現在築45年です。古家の為それなりの老朽化は当然なのですが、建て替える程の必要性もなく、ただし耐震性だけは心配で、昨年末から耐震工事計画を作って役所に助成の申請をしていました。その許可を待つばかりだった頃、3月のあの大震災が起こりました。我が家はなんとか被害から逃れましたが、他の地域での痛ましい様々な被害を知るにつれ、自然の力の強大さを痛感した今回でもあります。大変な被害に遭われた多くの方々には申し訳ないくらいにはからずもタイムリーな時期になってしまった古家の耐震計画、それでも今何かやっておける安全の為の事を少しでも…というわけで、ようやく最低限の構造補強に取り掛かりました。

リフォーム工事は大抵、開けて(家屋を一部解体して)みてびっくり!の連続ですが、その都度、すばらしい知恵を出して難所を乗り越えていく職歴50年以上のベテラン棟梁は頼もしく、興味深い仕事ぶりを工事期間中楽しませて頂きました。

まずは工事前に、普段は車を停めている家の前の猫の額程のスペースに、足場用の単管で組んだ作業小屋が出現。いつも工事現場で思うのですが、単管は自由な形を簡易に作れる本当に便利な構造材です。(写真1)この小屋は下が大工作業スペース、上は資材置き場になり、これで雨の多い梅雨のシーズンにも天候にかかわらず大工作業が出来ます。様々な現場でお馴染みの万能作業台は簡単に組立てられる構造で(写真2)、夕方作業が終ると綺麗に片付き何もなくなりますので、そこに普段通り車を停める事もできます。

今回は基礎を補強してから、木造の柱や桁(水平の部材)と斜め筋交いを金物でしっかりつなぎます。その上から合板を貼って剛性を高め、地震等の揺れがある一カ所を破壊しないよう、小さな家の外周を「薄く広く」というイメージで補強しました。(写真3)(写真4)外側からの補強工事なので、中はいつも通り住まいながら工事が進み、生活が大きく変わる事がないのは本当に助かります。

1ヶ月が経ち仕上がりの目処が見えて、工事が終わるのが寂しいような心持ちの頃、足場が解体されると至極あっさりした建物の形が見えてきます。(写真5)

最後の作業日には、雨や厳しい暑さの中、ずっと頑張って頂いた工事関係者の方々と小屋跡の前庭スペースで打ち上げのバーベキューをやりました。工務店特設のかまどを囲むベンチで、工事の方々のご家族と一緒に美味しいものを食べながらここまでの労をねぎらい、ささやかな完成祝いです。(写真6)こんな事を含め、建築の仕事はチームで作り上げてくという一体感が楽しさの一つでしょうか。

ところで、耐震補強の成果は?と言いますと、その後度々の余震でも確実に体感する揺れが少なくなり、工事前の低い耐震強度の数値と、工事後の1.0という基準を満たす数字は、体感としてこうも違うものだと実際に驚いています。

どこに居ても完全な安全はないのですが、少しでも日常の不安が減るのは有り難い事ですね。既存住宅の建替えまでの必要はないけれど、揺れへの対策が不安だと悩まれている場合でしたら、耐震補強は、労力、金額そして環境にもエコな、今の時代に合った方法と言えそうです。